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2013.11.22

【芝居】「くさり」れんげでごはん

2013.11.17 14:00 [CoRich]

17日までピカデリーホール(長野県松本市)。 100分。 レンタル家族サービスで働く男に舞い込んだあたらしい仕事。5年10年の長期に渡るが、破格の条件が提示され、失踪したこの家の次男の代わりとして他の兄弟たちと一緒に生活する、というものだった。が、この仕事を紹介し たのは同じくここでレンタル家族の一人として暮らしている女で、「助け出して欲しい」のだという。

いままでになく大がかりなセットに舞台正面上からの照明を含む機材、それぞれ場の間に映される「レンタル家族の心得」なることば。「れんげでごはん史上、最大規模」と謳うだけの気合いがはいった一本。オープニングの映像のズーム感、そこからチラシの画像にズームアウトするという映像は格好良くてワクワクします。ムービングライトで怪しげな雰囲気を作るのもうまく機能しています。

レンタル家族というネタそのものは小劇場の芝居では正直、そう珍しいものではないけれど、コミカルな感じとサスペンスな感じを混ぜ合わせて描くのは、兄弟とはどういう距離感なのかという物語なのです。 序盤で恋人を兄弟に紹介するというシーンはコミカルな感じがが強くて楽しい。当たり障りのないレンタル兄弟として向かい入れられる中盤もコミカルが強くて、大の大人たちがケイドロに興じたり、期限切れのカルピスでやばい感じになったり。が、徐々にこの場の不穏な感じが見えてきます。 30過ぎても不自然なほどに仲がいいというある種の気持ち悪さもさることながら、この場を支配している空気を誰がコントロールしているのかがずっと判らないことが観客の不安な気持ちを煽ります。

終盤に至り、この兄弟たちは次女のワガママを満たす、ということがこの家を支配しているのがわかります。兄弟たちは仲良く一緒に暮らしてなきゃいけない、という次女の想いが、この家を出て行こうという男が姿を消したことにつながり、サスペンス風味は最高潮に。

正直、謎解きな要素としては強力な物語ではありません。むしろ、普通は取り替えられない家族とか兄弟というものを「取り替え可能なもの」と捉えたことのひずみ。あるいは子供を「拉致してきてでも」家族にして、そのまま30代まで過ごしているということ。 勤めにも出ているようだしなんで逃げなかったんだとか、まあ細かいツッコミの余地はあるんですが、これも一種の共棲なのかなと思い、それ故にあとからジワジワ怖くなります。なるほど、タイトルの「くさり」はなるほど、「きずな」ではなく、強いて関係を維持するということか。

それでも、云いたいことがちゃんと云えるのが兄弟じゃないかという終盤は少し暖かい。物語の着地点は決して幸せなものではないのは、この家族を放り出したようなところもあって、評価が分かれそうな気もします。

雇われた男を演じた宗基は、コミカルから真摯さまできっちり、物語にとって観客の視座となる位置という説得力。長女を演じた馬渡理子は序盤「恋人の姉」のコミカルさが本当に好き。終盤でやっとの想いで次女に刃向かう姿は、この家族の先行きの一筋の光を感じさせる声もいい。物語の核となる次女を演じた市川しをりは可愛らしいキャラクタの造型、更に無邪気ゆえの怖さを静かにつくります。

しかし、前売り1000円でこの規模にセットを組み、照明も豪華に。やや心配になるほどではあります。が、それに見合う物語、役者の確かな力。新たな一歩だと思うのです。

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