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2013.11.28

【芝居】「地を渡る舟 -1945/アチック・ミューゼアムと記述者たち-」てがみ座

2013.11.24 14:00  [CoRich]

てがみ座の新作は、民俗学の研究者、宮本常一をめぐる100分。扇田拓也の演出。24日まで東京芸術劇場シアターウェスト。

柳田國男との出会いから民俗学に傾倒した財界人・渋沢敬三は自宅の一角設けた研究所「アチック・ミューゼアム」で若い研究者たちと、在野にありながら庶民たちが持つ日常の「モノ」を通してこの国の姿を記録していく日々を送っていた。
ある日、瀬戸内海に生まれ教師をしていた宮本常一を招く。学者になりたかったが銀行家としての日々に忙しい渋沢は、宮本に文字にならなかった庶民の暮らしの姿を記録するように日本各地の調査を支えていた。
戦時下に突き進む日本の中で変わっていくそれぞれの「民俗学」。

史実を下敷きにして、民俗学にかけた熱い想いの男たちを描く一本。日本の民俗学の父・柳田國男に端を発しても、もっと人々の生活に寄り添うような立場をとる人々。ゾウリの形や魚の呼び名の方言といった、取るに足らないと思われるような些細な庶民の生活を描く在野の研究者たちと、財界人にもかかわらず、文字通り資材をなげうってそれを支えた資産家の、ある種幸せな空間は、日本が周辺の国々を巻き込んだ「共栄圏」の構築をもくろむ中、その「民俗学」は「民族学」とされることを要請されるようになっていくという舞台とあいまって、巻き込まれていく学問にとっての悲劇を描きます。

日本中を旅する研究者・宮本常一のフィールドワークの一端をかいまみる農村のシーンが好きです。農村にいる老人に稲作の困りごとの相談にのり、まさに人間として向き合い話しをして聞き取っていくという地道な日々は、学問と庶民をつなぎ、終戦間近になって、人々をまもるために再会の旅にでるのは農村と都市をつないでいくという対比もおもしろい。

どこまでが史実でどこまでが創作によるものなのかはいまひとつわかりませんが、その想いを丁寧に描いていて、熱い想い、時代の怖さも描きます。

宮本常一を演じた古川耕史は、まっすぐで熱い想いの造型で物語の核に。資産家・渋沢敬三を演じた青山勝は、きちんと上品さといたずらっ子のような好奇心とが同居する魅力的な造型。農村の老人を演じた中村シュンは悲しみも力強さも内包した奥行きのある、農村での庶民の姿を好演。

資産家の妻という、この物語の中ではある種のヒールを演じる石村みかは、しかし、そこに資産家なりの苦悩をきちんと。もう一人のヒール、軍人を演じる生津徹も、ある種時代の背景を一人で背負うことになりますがそれに負けずに。この家に出入りする女・かつらを演じる七味まゆ味は、軽薄さの向こうに、もう一つの顔。民俗を語る上でほんとうは避けがたい被差別の人々。難しいバランスの役ですがことさらに 糾弾せずに描いたことにより、その理不尽さを感じさせるのです。

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