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2013.11.12

【芝居】「栄え」MCR

2013.11.9 15:00 [CoRich]

MCRの新作。10日まで駅前劇場。95分。

40男のサカエは、成功を収めたとはいえない日々を送っていたが、ある日突然、高校時代に逆戻りした。 人生の転機となる転校生がやってきたこの日。男子校なのに男の身なりで入ってきた転校生が女であること、恋仲になり結婚するが(←明確にはそうじゃなかったです。ご指摘感謝)破綻すること、そのままぱっとしない人生を送ることをもう自ら体験済みの男 だったが、それを知ってるがゆえに最初から転校生を意識しまくって、妙な勘違いをした教師たちに 早々に告白させられてしまう羽目になる。

いわゆる時間旅行もの、オジさんが人生の転換点に戻ってのドタバタ。物語の枠組みとしてはそう珍しく はないのですが、みるからに冴えず警備のバイトで生計を立て、20歳の時を最後に女とは縁の無い 中年がそのままの姿で高校生というのが、笑わせつつも、自分だってそんなに変わらないじゃないかと 身につまされるよう。男子校なのに女子が一人、男と偽って転校生というのは少年漫画っぽいし、それが ばれるシーンもやけに生々しく、グラマーな感じのもそんな気持ちにさせます。

そのオジサン高校生にしても、 あらゆるドラッグに手を出し果ては自分で作る教師にしても、ドラッグをキノコから手作りする父親に してもダメ大人ばかり、 高校生たち(まあ、これも役者の年齢はそう変わらないのはご愛敬だけど)がキラキラと自分の 夢を持っているのに、(見える未来で)あっさり崩されてしまうのも切なくおかしい。

そんな諦める感じのペーソスを織り込みながらも、物語の着地点は「未来は変えられる」というところへ。 もっとも、それをことさらに盛り上げないのも作家の持ち味。 ドラックを手作りする父親が石巻に引っ越したとしても生き残り、あるいは高校生から未来に向けて 歩む中で原発を止めまくったということを、風俗店の店先という、どうでもいい場所で さらりと描いて物語は幕を閉じるのがなんかカッコイイ。

友松栄は冴えないオジサンキャラ全開。汗をかきながら転げ回るようなのがどこか愛らしく、 しかし明日は我が身なわけで笑ってばかりも居られなく切なく。 堀靖明は得意なツッコむキャラクタが冴える。小栗剛はギラギラとした未来への熱意と、 それがあっさり折られるあたりがちょっといい。 本井博之、櫻井智也は軽い感じのダメ大人がまあ得意なキャラクタだろうけれど安定で楽しく。
女優一人で頑張る伊達香苗は、詰め襟に帽子姿がやけに凛々しく美少年といっても通じるよう。 「脱いだ」ときのギャップもよくて、サラシにしなかった生々しさもちょっと眼福。

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