【芝居】「ショーシャンクの空に」WOWOW・産経新聞社・ネビュラプロジェクト
2013.11.10 14:00 [CoRich]
名作と名高い小説・映画を日本で初めて舞台化。「桐島、部活やめるってよ」の喜安浩平の脚本で。10分の休憩を2回はさみ、195分。10日までサンシャイン劇場、そのあと大阪・名古屋・福岡・松本。満員の千秋楽ですが、地方公演はやや苦戦という噂も耳にしますが、長い上演時間にひるまず、ぜひ。
刑務所から50年ぶりに仮出所を許された老人は、刑務所での出来事をつづり続けている。本当のことか、妄想かあいまいになってきている。
妻とその浮気相手を射殺した男は無罪を主張しつづけ、終身刑となり凶悪犯ばかりの刑務所・ショーシャンクに送り込まれた男。手痛い歓迎で痛めつけられ続けるが、調達屋の老人に頼んで小さなロックハンマーを手に入れる。石を磨くのが趣味でそれを再開したいのだという。
ある日、看守が相続した遺産の税金に不満があると耳にして、若くして元頭取だった知識を活用して節税のアドバイスをさずけ、その礼として、仲間たちと一杯のビールを飲むことに成功する。所長や刑務所の節税や、図書室の予算の嘆願、労働に疲れ切った仲間たちのためにレコードを流すなど、小さな、しかし自由をかけた戦いを勝ち取っていく。
ある日、新入りの男に請われて読み書きを教えるうち、妻殺しには実は別に真犯人が居ることを聞くが、その上告の想いは所長によって握りつぶされる。
失意の男はすっかりやる気をなくしたかに見えたが、
原作・映画とも未見です。一種の刑務所モノともいえますが、老いていく時間の話しだったり、知恵で自由を勝ち取る話でもあって、確かにハリウッド的なおもしろさにあふれています。歳をとったからといっても、ずっと諦めずにいることの難しさと、しかしその向こうにあるかもしれない希望の美しさ。
その出来事を「調達屋」の老人の目を通したホントかどうか判らない小説として描く体裁に対して、3人のピンナップ・ガールというそれぞれの時代の映画女優たちを語り部として加筆。女優や歌の華やかさとコメディの要素を差し色のように加えて、3時間飽きさせずに走りきります。
成河(ソンハ)は理知的で物静の心の奥底にある圧倒的な強さを、この広い舞台の上できっちり見せる凄さ。ほんの少しかいま見せる怒りのエネルギーの凄さもまた魅力的。益岡徹は諦めそうになる老い、しかしその先に一歩踏み出す勇気の三幕めがいい。序盤の何でも出来る調達屋も帽子が実にキマってかっこいいのです。所長を演じた粟根まことは冷徹で汚くありつつづける物語のヒールを好演。鳩を飼っている老人を演じた大家仁志の、曖昧な笑顔の味(上映会のシーンで一番後ろの席で楽しそうに静かに笑っている表情が絶品)。
いわゆる小劇場の役者たちの活躍も嬉しい。今奈良孝行と畑中智行のコンビの「仲間たち」感だったり、山崎彬が二役を演じる「読み書きのわからない」少年の活発さと若さと。日栄洋祐や山崎和如・鈴木秀明の演じる囚人たちは序盤でこの場所が地獄であることを印象づけるという舞台設定を強い印象で。
ピンナップガールたちは、それぞれに可愛らしく、コミカルで楽しい。リタ・ヘイワースを演じた高橋由美子はゴージャスを押す印象、物語の中では明らかに異物なピンナップガールという存在を信じさせてしまうちから。マリリン・モンローを演じた新良エツ子はなんせあのボディに歌声。確かに適役だし、なんだろう頭弱そうにみえちゃう(本当に失礼だけれど)ある種の親しみやすさもモンローのよう。ラクエル・ウェルチを演じた宇野まり絵はおそらく初めて拝見したけれど、すらりとして舞台を動き回る姿がほんとうに美しい。
三部構成で二回の休憩は、ピンナップガールの時代として別れているけれど、正直にいえば、休憩一回の二時間半ぐらいに凝縮してほしい感じはあります。正直にいえば、といえば終幕の大きく広がる風景。きっと映画では本当の青空と海の壮大さなのだろうけれど、これを大幕への書き割りにしてしまうのはほんとうに勿体ない。ここはシンプルに青一色に輝く壁があればよかったのではないか、と思うのです。
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