【芝居】「お嬢さん」浮世企画
2013.11.15 14:30 [CoRich]
浮世企画の新作は、初めての女性メインという115分。17日までギャラリールデコ5。
かつては城下町だったけれど観光地というわけでもなく中途半端な地方都市。かつては名士だった屋敷に暮らしている老いた母親が倒れた報せを受けて長女が夫と娘を連れて久しぶりに帰郷する。隣の敷地に暮らす弟は病院つとめの医者だが金遣いも遊びも荒く評判は必ずしもよくない。隣人は、どうも気に入らないらしく何かと難癖をつけてくる。母についてきた一人娘は、この家に「おっさん」が棲みついていることに気づくが他の人にはみえないようだ。このおっさんは、元・座敷童子のなれの果てだと名乗り、大人になれない奴にしか見えないのだという。
目が覚めた母親は若い娘のように、キラキラとした眼差しで恋した男の名前を口にするが、それは亡夫ではなかった。母親が倒れた時に救急車を呼んだのは、最近時々訪ねてきていた男だった。目が覚めた母親は、その男のことを「恋した男の名前」で呼ぶのだった。
男の父親はこの母親とかつて不倫していて駆け落ち寸前まで行ったのだが、それは未遂に終わったのだという。家に尽くしているだけの母親の姿しか見ていなかったことに長女は衝撃を受ける。
名士といわれた家に嫁ぎ、実はちょっと世間知らずなところもあったりするけれど家と家族にすべてを捧げているような人生を送るのはいやだと母親を反面教師にしていたはずなのに、母親の隠れた女の一面をみ、そこからあれほどいやがっていたのと同じような人生を歩みつつあるというのが物語の骨組み。膨大な時間と
劇場の構造故に舞台中央にでんと柱。それを二カ所に分けたのはうまいkれど、上手端に座ってしまったあたしには家の奥に置かれたもの、古い写真などの家の雰囲気がわからないのは惜しい。ここが「元名士の家」という感じがしないというか。
膨大な時間と血のつながり、それゆえに起きる何かを描きたいというのはわかるけれど、それは母と娘の二代以外に関しては必ずしも生かし切れていない感はあります。家系図をもとにして喋る台詞がありますが、物語の上では正直、少々唐突に出てきた印象が拭えないのです。
元名士の家に並々ならぬ恨みをもって理不尽の限りを尽くす隣人を演じた森田ガンツが凄い。顔は笑顔なのに毒を吐き、嫌悪を隠しもしないという相当にエグみのあるヒールがほんとうに憎たらしい。かわいらしくなってしまった老女を演じた甘粕阿紗子は、ことさらに老女ではなくパジャマ姿にナチュラルな実年齢なりのしゃべり方の造型がよく、可愛らしく魅力的。戻ってきた長女を演じた広正裕子はいろいろ気持ちに余裕のなく苛つく日常のキツい感じと、恋心に戸惑い揺れ動く「女」を前面に出した振れ幅がいい。年下の男を演じた根津茂尚は年齢をそれなりに重ねた優男という風情。頼りない夫を演じた鈴木歩己は、それでも家族を守ろうという気持ちの熱さの造型、やや出落ちな感もある元・座敷童子を演じた森下雄貴はチャーミングで、物語にリズムを作ります。一人娘を演じた柴田薫との掛け合いのような会話が楽しい。弟を演じた島田雅之は隣人に比べてしまうとやや陰が薄い感は否めませんが、長女にとって(年下の彫れた男以外の)男たちが、身内すらも頼りにならないということをしっかり。
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