【芝居】「殺戮十七音」パラドックス定数
2013.11.23 18:00 [CoRich]
パラドックス定数の新作は、俳句十七音に魅惑された人の想いがないまぜの85分。24日まで荻窪小劇場。
俳句教室を主催する妻の浮気相手とその夫。薬物をキメながら溺れていく精神科医。地元の俳人。
史実の隙間を描くのに定評なパラ定ですが、作家が時折不思議な物語を紡ぐことがあって、そのギャップに驚き、あるときは面白がれて、あるときは頭の上に疑問符を乗っけたまま劇場を後にします。今作に関して云えば、俳句に囚われの身となったといってもいい男たちは、それぞれの生活はありながらも、俳句の世界で時に飛び、時に沈み。という物語。その人々の潔さとズブズブと抜けられないという背反するようなことが同居する不思議な空間。
序盤の、酔っぱらって吐くかのように、口からあふれる何か。そうせずにはいられない人のあれこれのシーンが好きです。表現せずにはいられないというクリエーターの業なのだと思うのです。特定の誰かというのではなくて、おそらくはクリエーターという立場の普遍的な宿命を、今作の作家が気持ちを共有したのだという気がするのです。
その上で、虚構を作ろうとしたのかどうか、妻の浮気相手にねじれた気持ちを抱く男と一緒の俳句教室をやっているというなんかねじれまくる感じが楽しい。見られること、存在することということが混じり合いながら、関係からみえる物語が観ていて見やすいのです。
俳句にたいしてそう何かを知っているというわけではありませんし、特段に想いがあるというわけでもないアタシです。物語としても捕らえ所も脈略もない感じで、どう受け入れたらいいのか、まったく方策が立たないワタシです。
日本語の十七音のリズムの心地よさは感じられても、その意味をとらえるには次々と音があふれるばかりで、受け入れるより先に自分がオーバーフローしてしまいそうで、楽しめるという感じにもなりません。 それなのに、小さい劇場ゆえに役者の強い圧力というパッケージは大したもので、最前列に座ったあたしは、その迫力に圧倒されてしまって目が離せなくて、帰り道で友達と楽しく酒が呑める足取りには、荻窪という場所がまた楽しいのです。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント