【芝居】「ニッポンヲトリモロス」チャリT企画
2013.10.26 15:00 [CoRich]
30日まで王子小劇場。65分。
2020年の東京オリンピックを三日後に控えたホテル・ザ・ニッポン。ロビー天井の水漏れは何度も水道屋を呼んで修理するのに、いっこうに直る気配がないどころか、どんどんひどくなっていく。今晩の宿泊客はオリンピック目当ての中国からの観光客ばかりだが、島をめぐる問題で突然中国のオリンピックのボイコットを発表する。客室の2号室は高温になり、開かずの間のはずの4号室に入る人影を目撃したとか化け物が棒状のものを集めていると従業員が騒ぐ。開会式は目の前なのに、噴火や津波の影響で工事は遅れに遅れていて競技場すら完成していない。
安倍晋三を揶揄する芝居、というのは既定路線、「ニッポンを取り戻す」というフレーズの発声が「トリモロス」になってることをおちょくる感じのタイトル。(もっとも、最近はこれも含めて発声をずいぶん矯正しているようだ、というのはラジオで久米宏がしゃべってたけれど)。オリンピック、原発事故とそれをコントロールしていると言い切る神経、にもかかわらずおそらくは原発内部なりタンクなりでは汚染水漏れがつづいているのに対処できない東電と政府(舞台装置では、ホテルのロビーを模したセットの上方を、あの吹っ飛んだ建屋のフレームにしているのが巧い)という状況を「天井からの水道漏れ」と「いつまでたっても直せない水道屋」という風に、飽きるほど繰り返して見せていきます。そうそれは永遠とも思えるほど終わらない繰り返し。謎の4号室・イルスカンダル様にYAMATO宅急便(だけど、それは魔女の宅急便そのものの格好で)によって届けられたはずのコスモクリーナーも結局発動することはなくて、この混乱は延々につづくのです。
爆発という最悪の事態を、ドリフ8時だよ全員集合のセットチェンジのテーマにのせてわちゃわちゃと大騒ぎに落とし込んでしまいます。解決できそうもない現実だということを象徴しているようでもなく、正直、物語としては、アイテムを並べるだけ並べた挙げ句に「大騒ぎ」と、これで日本おしまいだ、という諦観なポーズで放り出してしまった、という感じがしてなりません。社会で起きていることを読み解いて、きっちり笑い飛ばす芝居に出来る彼らだからこそ、 事実に対する比喩を広げるだけではなくて、強引でも何でも物語にしてほしかったなと正直に思うのです。 この芝居、揶揄したいという気持ちは見えるけれど、起こっていることに対する怒りとか危惧という作家の感情の片鱗が見えないことじゃないかと思うのです。
ヤマト、キキ、宅急便にコスモクリーナーというコネタは複合技で追い込んだ感じがしてちょっと好き。宅急便を演じた小杉美香はなかなかどうして可愛らしく。水道屋を演じた島越勇作の興味が定まらない感じもちょっといい。
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