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2013.10.27

【芝居】「SOY」信州大学 劇団山脈

2013.10.25 19:30 [CoRich]

60分×7劇団を5カ所で行う、まつもと演劇祭のオープニングを飾る、信州大学の劇団。27日まで四柱神社。

地方の家のリビング。教師の父親は書道部の合宿で久し振りに家に戻る。引きこもっている息子に墨を擦る仕事をさせている。娘は近所のコンビニの息子の子供を妊娠しているがまだ父親には知らせていない。妻とともに夕食をとろうとするが、冷や奴にかける醤油がない。コンビニはやや遠く、誰が行くかで揉める中ふとしたきっかけで、娘の妊娠を父親が知る。コンビニの息子は自分の教え子だが、強硬に結婚に反対する父親も、結婚を受け入れる母親もそれぞれに秘密を抱えていて。

広いリビングにテーブル、椅子だけ。どこか寒々しい感じすら。引きこもり、未婚の妊娠とそれぞれに問題をかかえる子供たち、仲よさげに見える父と母。静かな演劇よろしく、低い体温のままさして盛り上がりのないまま続く会話。合間に、「スミナメ」なる変質者や近所の主婦たちの噂話しを挟みつつ、基本的には「とっかかり」のないまま進む物語。

どこに着地するんだろうとやや不安になりかけた45分過ぎあたりから、物語が動きます。父親が嫌っているコンビニの息子こそが、この家の娘のお腹の子供の父親であり、娘と相手は父親の浮気による兄弟だと物語を立ち上げ、つづいて母親のもう一つの浮気によって近親相姦ではないのだと物語を転がすスピード感。コメディとしては少々強引な気はしますが、前半の静かな芝居との落差をきちんとつくることで、客席に笑い。

物語はここには安住しません。平和な家庭に見えた一家に訪れた危機ゆえに父親は目の前に今ある「今晩の食卓」を守ろうとするあまり混乱を極めます。日常から逸脱することへの恐怖からの狂気は、この破綻のきっかけとなった「醤油のない冷や奴」に向かい、解決の糸口が見えない醤油のかわりに「(おそらくは)毒入りの墨汁」をかけてでも、この食卓を守ろう、とするのです。日常を守るために陥る狂気ということ自体は斬新な発想というわけではないのだけれど、自分たちの身の丈の会話劇ではなくて、オリジナルな切っ掛けを探しているということがなんかいいな、と思うのです。

平和な日常の綻びのきっかけになった豆腐屋のラッパの音が終盤から徐々に舞台の向こう側あちこちから響き、平和な日常そのもののはずのあの音が、破綻を象徴するかかのように終演後も鳴り響くのは舞台の濃密さをつくります。

正直にいえば、中盤、醤油のくだりの家族の間の逡巡、特に父親がここに拘泥する理由がわからずに、時間が長く感じてしまいますし、結果的には伏線として回収できているものの、墨汁を豆腐にかけるということのやや強引な感じも惜しいところ。もっとも、豆腐の白と墨汁の黒のコントラストのおもしろさはあるはずだなとも思うけれど、それが絵面にはなりにくいところが勿体ない気もするのです。

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