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2013.10.15

【芝居】「待つわ」チタキヨ

2013.10.12 14:00 [CoRich]

チタキヨの第二回公演。90分。13日まで西新宿スタジオHAYURU。

見晴らしのいいマンションの一室。奥の部屋では老人が寝たきりになっている。元は愛人のマンションだったが、愛人の姿はなく、妻や三人の息子たちも近寄らない。老人の長男の妻が通ってきていて介護し、医者である次男の妻も様子をみるために時々訪れている。
三男の妻は長い間姿を見せなかったが、義姉二人からの誘いを断りきれず、訪れる。傍若無人に振る舞う義父のことを殺してしまおうと冗談めかす義姉二人だが。

キッチンを備え付けた多目的スタジオ。マチネ公演では秋の日差しが差し込んできて、うららかで幸せなリビングダイニング、といった空間。

久々に訪れた三男の妻はアーティストだからぶっ飛んでるはずなのに、介護に疲れた長男の妻、支えながらも、自分にそれが降りかからないように巧みに支える次男の妻たちが冗談めかして「義父を殺してしまいたい」という言葉が冗談にならない深刻さ。 実の息子や妻は何もせず、「嫁」たちに舅の介護が押しつけられていというのがベースだけれど、介護疲れ、それを避けようとする気持ち、さらには物語が進むにつれて、レイプだったりセクハラだったりと、コミカルな語り口とは裏腹に相当に深刻な事態。「殺したいとまで思っているのに、自分が支えなければいけないとまで思いこんでしまう」という(強いられていないのに)洗脳まがいな状態になることなど、現実社会で起きていることをきっちり描き込んでいくのも、作家・米内山陽子の確かなちから。

コミカルな描き方だけれど、この描かれている世界の深く暗い深刻さに暗澹たる気持ちになるのです。それでも健気なのかタフなのか、きっちり生きていく女たちという雰囲気ではあって、暗い描き方ではありません。アタシはまだ介護する側もされる側も未経験だけれど、この怖さ。正直にいえば、沸き立つ客席に反してアタシはあまり笑えないのだけれど、それでも目が離せなくて、一気に見てしまうのです。

中央に置かれたモニタに内心を語らせるというのは見やさわかりやすさに寄与する反面、正直にいえばこの座組の作家・役者ならばこういうある種の飛び道具を使わなくてもしっかり語れそうなのに勿体ない感じがしないでもありません。

長男の妻を演じた高橋恭子は美しいのにあきらかに介護に疲れた造型ゆえに狂気の迫力と説得力。 次男の妻を演じた田中千佳子は専門職という立場と、支えるということはしながらも、矢面には立たない立ち回りという頭の良さをきっちり造型。三男の妻を演じた中村貴子はアーティストという華やかさと体現。アーティストの孤高を描く芝居は数あれど、自分が普通だというのを認める怖さを押し出すことで、上の二人の狂気を際立たせて印象的。

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