【芝居】「おおいなる不完全」アートひかり
2013.9.29 17:00 [CoRich]
東京や横浜・急な坂スタジオで活動の後、長野県に移住した演出家・仲田恭子の松本初公演は。29日まで信濃ギャラリー。
一人の男と一人の従者。従者は首に縄をつけられている。従者を市場に売りにいくのだという。男の名前はポッツォ、従者の名前はラッキー「我々は何かを待っている」
男は女を笑える場所に行こうと誘って連れてきたのは工事部場のそば、テロで爆破された建物の給仕が「出る」のだというが、彼女はよくわからない「大笑い」
女はPCに向かっている。男と会話している。二人の話は、たとえば上昇していきたいだったり、結婚を夢見る女の話だったり。「相寄る魂」
フランスの劇作家ギィ・フォワシィの2本と、ゴドーを待ちながら、の脇役な二人の物語の3編。 「何かを待っている」は、ゴドーに出てくる二人。「朝日〜」は別にして、きちんとしたゴド待ちの舞台を観たことがないアタシにはこの二人がどういう人物かはよく知りませんでした。ロープを巻き付けた男を市場に売りに行くのだ、という男。従者だからいいなりに踊っていたりするけれど、主人が基本的に俗世の事をを云ってるのに対して、従者が突然哲学を語るような演説をしたりして、見た目と内面の違い、どちらが高尚かを、ひっくり返してみせるのはちょっと面白い物語。
その物語を女優二人で演じます。小さな蔵である信濃ギャラリーの外側に広がる駐車場から大声を上げて入ってくるのは日常からこの芝居の世界に繋がるようで楽しく。姿は水着のようなパンツだったりして、なんかもやもやしちゃう、オヤジなアタシです。主人を演じたわかばやしめぐみのふんぞりかえる感じが逆にコミカル、従者を演じた平井光子の伏し目がちで従う感じだけれど、その内なる何かを秘めていそうな感じ。
「大笑い」は、ちょっとデート風の男女の会話。日常の会話の面白がりポイントのずれまくり。でも、一緒に居てなんだったら一夜を伴にしたいと男も女も思っていて、でもそれを直接的にはなかなか言い出せずに、ひたすら面白いと思うことを一方的に語っていて。でも、その面白がりポイントをぼんやり見ていると、実は爆破テロとかそこで死にかけた給仕をどうもなぶったらしいとか、どんどん笑えない話になっているはずなのに、男はそれを「楽しかった話」として話し続けているズレとか。男を演じた杉山雅紀は一方的にズレ続けていて、なんか男の哀しい性のようなものを感じたりもして。女を演じた加藤久美子は魅力的なのに、そのずれまくる男にそれでも(おもに欲望なのだろうけれど)寄り添い、ついていこうく、というのがもうアタシにはファンタジーだけど(泣)、なんか説得力。
「相寄る魂」は女と男が公園のベンチでとなりあってしばし話す時間という原作をもとにして、女優ひとりと、PCの向こう側のチャットだか、合成音声の何者かだかという会話の体裁に。おそらくは演出の意図でしょうが、男の台詞は音量はあっても何を喋っているのかはわかりにくい合成音声風になっています。二人の会話という体裁ならば会話は成立してるようにみえるかもしれないけれど、会話の相手ではあっても自分のことだけを語り続けていて相手のことを聴いていないという感じに見えて、女の内面側で起こっていること、という体裁になるのは面白いなぁと思うのです。演じた曽根原史乃、一人で喋り続け時に夢見がちだけど妙齢をしっかりと造型。
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