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2013.10.17

【芝居】「ファニー・ガール」シンクロ少女

2013.10.13 19:30 [CoRich]

14日まで三鷹市芸術文化センター星のホール。休憩無しの150分。

男子高校生、複雑な家庭で、母親死別し、引き取った姉は処女で性欲がなく、オカマと結婚している。その家には友達や、近所に住む10歳になる幼い娘をつれた父親がやってきて大勢で晩ご飯を食べることがしばしばだ。高校の親友は裕福な家の生まれで同級生の恋人がいるが、その彼女とも時々映画をみたりしている。 幼い娘の母親も娘を捨てて出て行って父親と二人で仲良く暮らしてきた。父親は難病で余命がなく、別れた妻に知らせる。妻は再婚相手とその連れ子と一緒にやってきて、娘を引き取っていく。
それから何十年かが過ぎた。 裕福だった高校生は恋人と結婚したが事故で盲目となっていて、自分の若い頃にそっくりな息子が自分の子供なのか怪しんでいて冷たく扱う。妻は時々もう一人の同級生と逢瀬を重ねている。幼い娘だった女は結局また母親に捨てられたが、誠実な男と結婚して、妹と三人でこの町に戻ってきて住んでいる。

わりと恋愛至上主義という感じのする作家だけれど、今作は三角関係をベースに置きつつも、産みの親と育ての親、血が繋がっていなくても幸せな家族、血が繋がっていても疑心暗鬼な家族、あるいは死にゆく父親と娘のようにさまざまな親子を含む家族の物語を描きます。

物語が様々な形で描かれるのも面白い。ベタベタに死ぬ父親が娘を抱きしめるという物語かと思えば、「In my life」を歌いあげ、盲目の男が陰鬱に家族に疑いの目を向けているような話のあとには「Somebody to love」をミュージカルかと思うほどに仕立てるなど、普段の彼らの劇場に比べれば格段に広い舞台(これでもこの劇場の普段よりはずいぶん狭く作っていて、それも成功しています)を存分に使いながらさまざまな演出を試しているようでもあって、盛りだくさんの楽しさなのです。正直にいえば、遠距離観劇なアタシですし駅から離れている劇場ですから、2時間という枠の方が嬉しいのは事実なのですが。

ダージリン急行」以来、この劇団はある種のアメリカ映画の雰囲気を纏うようになってきています。 沢山の音楽がそれを作っているのも事実だし、どこか突き放したような俯瞰で描いているのもそういう雰囲気を作ります。唐突なミュージカルはインド映画っぽいとおもったけれど、これはたぶん「ダージリン〜」のせい。映画と云えば、タイトルと同名の映画(未見)は幸せな結婚をしたはずなのに夫婦の間にある重い空気感というのは盲目の夫のことだよな、という答え合わせも楽しい。

血のつながり(つながらなさも)や一緒に暮らすことのような家族のことを沢山描いているように思います。 性欲のない母親とオカマの父親に育てられた血の繋がらない息子の家庭が親子にも夫婦にも愛情に溢れているのに、血のつながりがあるといって強引に娘を引き取った母親の駄目な感じ、あるいは結婚していて愛情だってお互いにちゃんとあるのに、夫が義妹と浮気してしまう感じやそれを知っていても一緒に暮らす妻だったり。群像劇ならぬ群家族劇で、さまざまな家族を並べてみせるのです。

高校生の時の、親友の彼女なのに一緒に映画を見て楽しい関係、というのは凄く腑に落ちる感じ。恋ってこういうことから始まるんだよな、と遠い日の花火に思いを馳せるアタシですが(泣)、確かになにかの体験や物語を共有できるパートナーということの嬉しさ。初めてを演出する、という台詞もちょっといい。

主役の娘→女性を演じた浅野千鶴は子供の無責任な軽さと親への想いの重さ、結婚してからのしっかりした感じというダイナミックレンジが実にいい。その父親を演じた用松亮は軽さゆえに、一幕目終盤の本当にベタな親子愛との落差を作ります。夫を演じた中田麦平は誠実さの造型が説得力。別々の二人の子供を演じた満間昴平は拗ねたような感じがちょっといい。盲目になった父親を演じた泉政宏はある種のめんどくささに説得力。子供を産んだものの育てなかった母親を演じた墨井鯨子は物語の中で唯一のヒールを引き受ける力強さ。

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