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2013.10.27

【芝居】「濡れた花弁と道徳の時間」肯定座

2013.10.26 19:30 [CoRich]

肯定座、6月の1.5回目公演を経ての2回目公演。ラブホテルを舞台に奥行きも濃密さも併せ持つ115分。27日まで明石スタジオ。

ラブホテル、三つの部屋。
女子高生と援交する男。男は自分のやってることを棚に上げて説教おやじよろしくよく喋るが、女はそっけない。そこにヤクザが乱入してくる。(405)
中年の男と若い女がいちゃついている。二人は結婚しているが同居する姑が気になり、子づくりのためにラブホテルにやってきている。女がバスルームに入ると閃光と大きな音とともに、初老の男が現れ、自分は息子だと名乗る。 (304)
若く鍛え上げられた肉体の男と、訳あり風の女がやってくる。息子のサッカーのコーチとラブホテル通いを重ねているが、それに気づいた夫は飲み屋で知り合った外国人のヤクザ風の男と乱入して現場を取り押さえる。妻は息子にサッカーを教えてもらうためといいつつも、夫では満足できないセックスに満たされていると告白する。 (305)

構成としては405→304→305→304→405という流れ。304は他とは独立していて、時間の経過のために二つに分割したという感じ。405と305は間違った乱入に端を発してつながり、305で出てきた事実が後半の405で複合して物語に新しい地平が広がってわくわくするのです。

405の物語は援交する男女、こんなことしてるのを棚にあげてのオヤジの説教という序盤から、セックスが別に格段に好きな訳ではなくて、生きていくことなのだ、混乱があるけれどそれまで表情のなかった女に笑顔が現れ可愛らしくなるというのがいい。それなのに、他の物語を挟んで戻ってきた405は、男の整形と、不細工であることのコンプレックスと、それにまつわる犯罪の吐露という新たな地平へ。幕切れはあまりにあっけなく、後味のよいものではないけれど、乾いたギャング映画のようでもあって、いたずらにウエットにしないという意味ではうまく機能しています。

ナマりまくる女子高生(!)を演じた奈賀毬子は心を閉ざした感じの中に一瞬みせる笑顔の前半がいい。買った男を演じる久我真希人はオヤジ感前回な前半はコミカルな造型が後半ではコンプレックスの固まりという整形前の別人格が透け見えるようなダイナミックレンジがいい。

304の物語は、まさかのSF仕立て。バックトゥザ・フューチャーを匂わせて(あるいはドラえもんか)、そういう体裁でやつれた50男が出てくるのは出落ち感満載でおもしろいけれど、もちろんこの作家、それだけでは終わらせません。前半では自分の人生も、この家族の人生も悪くなったのは自分のせいだと責める気持ちが(自殺ではなく)原因となる両親のセックスを止めにくるというある意味メンドクサい息子という他人を置くけれど、後半では(夫が寝ている間に)妻は息子とちゃんと話しをして受け入れて、息子の望み通りに子作りは延期してコンドームをしてセックスしようと決めれば息子は徐々に薄くなり、コンドームに水を入れて風船よろしく(中学校で流行ったw)割ってしまって(生まれてもいないけれど)子供を守らない親なんていない、という後半は全く別の、愛情の物語に着地するのです。他の物語と交わらないことで、家族の物語ということが強調される感もあって、実にいい話なのです。にちょっと鼻の奥がぐずぐずしてしまうのです。44歳の夫を演じた安東桂吾、セックスに楽しく前向きな感じがややルパン三世なかんじの造型になっていて楽しい。妻を演じた福原舞弓に、あんな単語を云わせる演出がオヤジ的には実にいいけれど、彼女も楽しそうなのがいいし、息子を呼んで抱きしめるのはまさに美しい母親の姿であって神々しくも。息子を演じたちゅうりは、出落ち感満載だけれど、疲れたオヤジのリアリティがいい。

ルームメンテナンスをするパートの女たち3人、息子の友達がセフレとかAVみたいなネタを織り込みつつ、後半につながる種をまきつつ。独身女を演じた菊池美里は静かに暮らすやや気の弱い女からのギャップがいい。声や表情でことさらに表現しないのがよくて、フラットに造型していることが効奏しています。息子の友達とセックスしているパートを演じた大石洋子もフラットな表情のままなんか自分のやばいことをぽろぽろ喋り、新人なのに仕事を選ぶなんて具合の自由さの造型。リーダー的なパートを演じた久行しのぶはこの三人のまったく関係ないものがたりをつなぐ役割を好演。

その同じ部屋、305の物語は主婦と(息子の)コーチとの浮気というメロドラマかと思わせる枠組みだけれど、そこで語られるのは夫婦のあり方の物語。ぎゅんと奥行きがあって味わい深い。 序盤若いスポーツマンと主婦の浮気、女が恥ずかしがりながらも野球拳をして、あるいは男の言いなりになっているのはある種のプレイな感じでぞくぞく。(もっとも、これが度を超せばDVにつながるわけだけれど、他人という距離感がそれを観客に想起させないのは巧い)。乱入してきたヤクザと夫、制圧できると知れば夫は殺せと命じても、外国人がそれを頑として受け入れないというのがちょっといい描き方。妻を演じた平田暁子は脱いだら凄くてしばらくぼおっとしてしまうオヤジなアタシです。恥ずかしさの表情も、セックスに満足できないと夫に告げる力強さもじつにいいのです。夫を演じた富士たくやはやや鼻持ちならない敬虔な造型。浮気相手を演じた椎名茸ノ介は鍛え上げられた筋肉もバクテンもサッカーコーチという説得力。

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