【芝居】「五反田の朝焼け」五反田団
2013.9.28 15:00 [CoRich]
五反団の団員のみ上演する団員公演の二回目、で90分。29日までアトリエヘリコプター。
被災地に千羽鶴を折って送り続けるサークル・絆の会。主催する女テンション高く、近づく祭りでのバザーにも気合いが入っているが、メンバーたちは理不尽に責められたり少々飽きが来てる感もある。その女の近所に住む女が主催するおもてなしの会は、オリンピックも決まりイキオイを増していて、あの手この手で絆の会のメンバーを切り崩し、寝返らせて勢力を増している。埼玉から戻ってきて姉と暮らし始めた男は遠距離恋愛を続けてきた恋人の女との同棲を申し込むがあっさりフラれてしまう。
ほぼ素舞台に、タンスと畳一畳。サークル活動する公民館だったり、それぞれの家だったり、あるいは公園だったりとさまざまに変化。二つのサークルの血で血を洗う攻防だったり、ふられた弟のためにパスポートを盗んでまで元恋人を旅行に行かせない姉だったり、あるいは同棲でじゃれ合う男女だったりをほぼ全編爆笑編で紡ぎます。
震災と五輪という組み合わせは絶妙な感じがあって、忘れちゃいけないことだけれど飽き始めているという感覚だったり、あれだけ不要だとdisっていたはずなのに、それが流れだと知るや否や次々と乗っかる人々という感覚だったり。批評的な気持ちが作家にあってこういう話なのかは知る由もないけれど、 結果的には批評的なことを、しかしことさらに批評めいた描き方を丁寧に避けて爆笑編にしてしまう、というのは、作家の力でもあるし、それに応える役者たちの凄さでもあると思うのです。
あるいは長い間の長距離恋愛、おそらくは男の側がストイックに過ぎた結果で女にフラれてしまうということなんだろうけれど、そこに至る男の想いの深さが幾重にも空回りするのが可笑しいし、哀しいし、なんか自分の過去の一ページを振り返るようなほろ苦さもちょっとあったり(泣)。
なにより、全体を貫く高いテンションでの爆笑編がじつにいい。 楽しい感じ、軽い感じとも云えるけれど、頭おかしい感じのテンションの高さを前提にして、それで笑いを取りつつも、なんか懸命に生きてる人々が浮かび上がってくる、(でもペーソスという枯れた感じまではまだ行かないバランスがいい)のです。
序盤と終盤で出てくる人形・山田。人形浄瑠璃だったり糸繰り人形(マリオネット)な雰囲気まで出てきて、新たな地平が見えたよう。同居する女を演じた西田麻耶は今回の芝居の全編のテンションを高く維持した功労者。(人形相手に)甘くばかりはないけれどじゃれたりもする同棲生活を一人(と一体)で演じきる序盤が圧巻。あるいは敵・おもてなしの会への敵意だったり、裏切り者たちへのあれこれだったり。ここまでくるともう漫画のキャラクタだけれど、それをきっちり9ステージも演じきったということは凄いのです。その敵を演じた望月志津子はもう何回も拝見していて大人しめな上品さが身の上だと思うのだけれど、それに上塗りするように毒吐きという新たな一枚を重ねて、よく分からないぐらいに重厚さが増して新たな役者の魅力に。フラれる男を演じた前田司郎はいい歳してストイックを貫いた結果の不幸(ハッピーエンドが嬉しい)の説得力。その姉を演じた後藤飛鳥はしっかりとした想い、あるいは延々とした会話でも負けない感じの底力を再発見。大山雄史はパワフルな女性に囲まれる若い男子感がいい。中川幸子のパシリ感というか子分な感じがちょっと素敵。フる女を演じた宮部純子は惚れさせ続けるということの説得力。
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