【芝居】「G.G.G.」シアターTRIBE
2013.10.27 11:30 [CoRich]
まつもと演劇祭の常連、シアターTRIBE。27日までMウィング2F展示ギャラリー。
「世界をめっさ正す会」に集う男たち4人。些細な日常に正義のイチゲキとかなんとかいいながら、枢機卿とか司祭とかのランク付けして盛り上がりつつ楽しんでいて、公民館で隣の部屋を使っているおばちゃんに怒られたりしている。このサークルにフリーペーパーの記者が取材に訪れる。 今はこんなサークル活動しかやってない男たちだが、かつて道路工事の下請け会社の社員で工事の不正を告発したがために人生を狂わせてしまった人々だった。ふざけているように見えて頭の中に「人民放送局」からの叫びが聞こえるのだという。
松本市の中央公民館の展示スペースを使っての上演を逆手にとって、公民館に集うサークル活動の人々という体裁に物語を。熱かった男たちが人生に挫折し、静かに互いにふざけながら過ごす日々。だけれど、その心の奥底にあるはずの内なる熱い思い。心の奥底の声を「人民放送局」として具現化して見せて、日常に埋没しがちだけれど、心にある正義諦めてはいけないのだということを愚直なほどに真っ直ぐ描きます。
不正の告発で告発者の安全が保証されないこと、報道されるべき事が報道されないことへの怒り、(別世界として描かれている)知る権利が保障されていない世界の恐怖、一人では戦えなくても世界中の同士が繋がれば戦えるかも知れないこと、そのためには「G(GOLD=金銭、GOD=宗教、GUN=武力)に支配されない」で自由で居なくてはいけないという矜恃。直接世の中の何かを描いているわけではないのだけれど、秘密保護法(そういえばこれを描いた芝居をまだ観てない気がする。)だったり、美しかったり取り戻したかったりという甘言でどんどんきな臭くおかしくなっていくということへの作家の強い怒りが溢れる舞台なのです。そういえばトンネル工事の、という話題は、交通手段としては中央道に大きく依存する松本市民の肌感覚でもあって地に足がついたところに立脚しているのも安心なのです。
あるいは終幕、仮面を付けた男たちはまさに「アノニマス」な人々の存在で、表向きぬるま湯サークルの顔でも、その内側で互いを知らずに繋がっていくようなネットワークでの私たちという感じでかっこいい。
正直に云えば、前半、男子四人のホモソーシャル感一杯なぬるま湯サークルで出てくるネタ、もちろんユルいネタでなければならないのは承知の上で、観客のあるある的な共感をうんでほしい。あるいは人民放送局、その力は「(内なる)声」なわけで、そこに音としての圧倒的な説得力が欲しいところ。
ガンダムオタクな男を演じた伊藤利幸は一度観たら忘れられないルックス、決して巧い役者ではないけれど、存在感がすごい。フリーペーパー記者を演じた、ちんてんめいもニュートラルな造型で説得力があります。
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