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2013.10.10

【芝居】「短編30分×3」小松台東

2013.10.5 19:00 [CoRich]

小松台東の企画公演、三人の作家の短編を30分ずつで構成。金土日は四本目の短編がついていました。6日までAPOCシアター。

一年前のある出来事で知り合うようになった三人の男女。あれから生き方がかわってしまったかもしれない。三人で箱根に出かけることにするが、これはもしかしたら、あの出来事から半年の時に行った箱根旅行かもしれない「大空」(作・長谷基弘 演出・松本哲也)
その町にはキャバクラが一軒しかない。たまたま訪れた男についたホステスはこの店のたった一人のホステスで、しかも町にひとつしかない中学校の同級生だった。「町でいちばんの」(作・演出 上野友之)
病室で寝たきりになっている男。看病しているのはすこし派手な服装の女。古くからの友人もよく顔を見せる。東京の大学に行ってる息子も久しぶりに病室に居る。病室を尋ねてきた和服の女は礼をいうが、これまで看病してきた女には二度とこの部屋に来ないようにいう。「ノリオの病室」
(作・演出 松本哲也)
男が出待ちしていたのはプロレスラーの男だった。握手をもとめるとメンドクサそうに応えるが、男はそれが気に入らなくて「10年ぶりの出待ち」(5日のみ、作・演出 松本哲也)

「大空」は 人の飛び降り自殺の現場に居合わせてしまった三人、その事件の衝撃から立ち直るためにカウンセラーが提案した箱根旅行。半年を隔てたふたつの旅行の記憶が混濁し、今この時点がどちらの旅行なのかわからなくなる感覚。この三人の関係や出来事がまばらにパズルのように示されていくのが面白い。うち二人が過去恋人だったというのを残りの一人がずいぶん経ってから知ったとか、三人の出会いは偶然じゃなくて必然だったとか、記憶の順番が前後したり、くるくると回る感覚。

屋上と大空と三人というミニマルさや記憶や視点をかき回されるような感覚がどこか鴻上尚史の「トランス」を思い出すアタシです。話は全く違うし男女比だって違うけれど。

内山ちひろはこの出来事をむしろ大切なものとっている女を演じていて、人なつっこさな役者のキャラクタによくあっています。メガネをかけた女を演じた河南由良はクールさが勝った造型でかっこいい。男を演じた櫻井拓也は、若いのに何をしているか正体不明だという高等遊民をしっかりと。

「町で〜」は小さな町のキャバクラのキャバ穣と男、恋心を言い出せないまわりくどい男。人生の補欠な感じ、という主人公。到底かなわない「強くて悪い男」を前にして惚れた女を奪われてしまうけれど、そこから女を勝ち取るんじゃなくてたまたま強い男が去ったから自分がその後釜にというハッピーエンドも含めて「自分で切り開かない感じ」が他人とは思えず実にいい話だなと思ってしまうアタシです。

唯一積極的に動いた旅にしても、「自分捜しが向いている人と向いてない人がいて、後者」とばっさり。とはいえ、みんなが前向きポジティブでなければならない、なんてことはないはずで、そういう生き方だって許されているようで、このハッピーエンドに想うのです。

キャバ嬢を演じたレベッカが人なつっこく可愛らしい造型。勝てない年上の男を演じた松本哲也が不器用そうな、しかし芯の強いオトコをしっかり。

「ノリオ〜」はもう先は長くなくてしゃべることすらできなくなって寝たきりになっている男を巡るはなし。物語の核となるのは入院以来献身的に看病してきた愛人と、ほとんど近寄ることもなかった妻や娘の話。金で愛人になってたはずなのに、その金がなくなってもまだ看病し続けたいという気持ちも、でもやはり看取るのは家族だという気持ちもそれぞれの立場で交錯する、ちょっとほろ苦いしかし、ある意味とても(男にとっての)ファンタジーだったりもします。

古くからの友人の男を演じた澤唯がまたいい味わいのオジサン感。蹴られたりしない伊達香苗は珍しい、というのもずいぶんなイメージなアタシですが、和装もちょっといいし、「ごくふつうの」女性を丁寧に。愛人を演じた河南由良にしても、息子を演じた櫻井拓也にしても一本目との印象の違い、しかも丁寧な造型で印象に残ります。

瓜生和成をゲストに迎えた「〜出待ち」は、作家らしくプロレス愛溢れる一本。握手してくれるのは嬉しいけれど、そこは拒否する「らしさ」で応じて欲しいし、事実10年前にヒールとして名を馳せた時にはそうだったわけで、そうあってほしい、という気持ちはプロレスファンのある種の面倒くささをきっちりと描くのです。10年ぶりの巡業で訪れた地、という距離感がよくて、間近でみる機会がほとんどない地方だからこそ、10年の時を経てそのプロレスラー自身とその立ち位置の変化をないまぜにぎゅっとこの瞬間に圧縮してみせる構成が効いています。

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