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2013.10.12

【芝居】「保健体育」20歳の国

2013.10.6 15:00 [CoRich]

8日まで王子小劇場。110分。

高校三年生の4人の女子生徒。それぞれに恋人ができた。やっとの想いで告白してきた内気がちな同級生とだったり、ノリのいい運動部の同級生とあるい感じでつきあうことになってたり、東京の大学生が彼女と別れて告白してきたり、教育実習が終わった大学生に自分からつきあいたいといったり。4人は学校からほど近い「メトロポリス」という飲食を兼ねるカラオケ店に出入りしている。つきあってるけれど、それぞれに別の男とも枕を伴にしていて。

ずっと4人でつるんでいて、ちょっと奔放な女子高生(JK)の恋愛模様と、女教師とその夫と恋人を巡る物語。正直にいえば、4人の物語と女教師は緩やかに場面としては繋がっているけれど、物語としては実は繋がっていないのは残念な感じ。アタシの友人に云わせれば、4人の女子高生たちもそれぞれにバラバラに存在しているというだけ。そういう、バラバラに生きる人々の生態の「観察演劇」のような体裁とも云えるのです。

王子小劇場の奥に客席を作る逆さまの舞台配置。ガラス張りの音響ブースをカラオケルームに見立てるのは巧い。カラオケの画面の奥からカラオケする人々を除くようで楽しい。カラオケに限らずJ-POPを数多くつかっていて、時に楽しさ、時にエロチックさを盛り上げます。

全体に想いとセックスに明け暮れるだけの人々。元々恋仲だったけれど純粋に待ち続けていることに疲れてしまった結果だったり、寝ることはあっても恋人じゃなかった男に抱いてきた恋心だったり、ちょっと興味がある、というだけで大人と寝てしまうけれど恋とも愛情とも違う快楽だったり、地味だけど経験豊富で同級生の幼い男が少しもの足りなかったり、しゃべれないもどかしさだったり。 好きだと想う感情なのか、大人の男へのちょっとした興味なのか、あるいは快楽の求める気持ちのハードルの低さなのかがあいまいなままに奔放な女子高生たち。学校の近所にあるらしい飲食店というかバーというかカラオケというかな店。高校生もバイトも集うならば何が起きてもおかしくない感じなのが眩しい。

もうひとつのクラスタの物語。妻と夫、誘う同僚。こちらは恥ずかしさもある大人なのが、オヤジのワタシには安心感すら。 こちらのアバンチュールな感じは判った上で大人が甘えてしまう感情としての。物語としては女子高生を巡る物語とは完全に切れているけれど、浮気ってもののある種のステロタイプをベンチマーク的に置くことで、女子高生たちの奔放さが浮き上がるというか際だつのは面白い感覚なのです。

ゆるゆるとした恋愛模様かと物語を観ていくと、中盤に至ってルーレットが回転を始めます。恋人はいるけれど、他の男とそれぞれに寝てしまう。友達の彼氏だったり、教師だったり、ずっと好きだった店長だったり。それが起きても壊れずに、女たちがそれぞれに成長していくという意味ではしっかりと成長譚になってると思うのです。

女教師を演じた異儀田夏葉が、こんなにも女を感じさせる大人を色っぽくしかも笑わせない普通の女性として描くのは意外に少ないけれど、しっかりと説得力があるし、フラフラという気持ちになるオヤジなアタシです。長身の女子高生を演じた長井短は誰も信用していないという体温低そうな感じの説得力、演劇部の女子高生を演じた川田智美は実直な同級生(池上三太が臆病な感じでいい)のことがちゃんと好き、という(アタシにとっての高校生の恋愛というステロタイプが実にいい造型。店長が好きな女子高生を演じた湯口光穂はノリが良くて同級生と、という序盤の感じが好き。教師と恋仲の女子高生を演じた田村優依はキモい教師(竜史)に思われる説得力。その恋仲な教師を演じた高木健は実直に見えて隠し通す大人、という造型がいい。

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