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2013.09.25

【芝居】「SUMMER PARADE」AnK

2013.9.21 19:30 [CoRich]

70分。22日までサブテレニアン。

小さな部屋で寝ている男女3人。女は修学旅行のグループの部屋に居られずここに居て中一人起きている。一人の男は女に気付き、ずっとあこがれていた文集委員の彼女に友達になろうと話しかける。女は秘密の道具を取り出して、これで自分が頭のなかに紡いだ物語をホログラムで見てほしい、という。
女が紡ぐ物語は、グループの部屋に居られなくなった理由、やさしいおじさんが月の石を見せてくれた話、地味だけれどキャプテンにも生意気な後輩にも告白されるサッカー部のマネージャー、居なくなった王を探す旅にでる星の王子、朝帰りしたり男にフられる母親との口論などさまざまだったが、どれも終わりのない話だった。

コの字型に囲む客席、床に三枚の布団らしいもの。客席から見下ろすような場所に舞台。

序盤、地味でいじめられがちで、しかも時々反撃したりする心の強さのある女生徒が閉じこもる殻。男に対しては極端に拒否反応示しつつも、相手がアンドロイドならば緊張しないし、頭で紡ぐ物語をホログラムで見せる(Panasonic製という設定で、ホログラム側の三人の役者の首ヨコにPanasonicと書いてあるのがちょっといい)のおかげもあって、饒舌に語り始める自分の物語。バラバラな物語に見えて、父親が家を出て、再婚を目論む母親との二人暮らしという状況、自分だって恋人が欲しいけれど地味だし怖いし両親を見ているトラウマもあるという気持ちにすべての物語がつながっていきます。地味だし友達も少ないけれど、内に秘めた想いが堰を切ったように溢れだすのは実にわくわくとするのです。

あるいは一方的に語られる「女子の話」を男子が聴くときの心得はよく云われることだけれど、判りやすくて楽しい。いわく、一人の言い分だけではわからないなどと正論は厳禁、すべては共感(したふりでも)が大切なのだと。これを高校生のアタシがわかっていれば、という遠い目にもなろうというもの(笑)。

いくつか語られる物語のなかでも、父親である王を捜しに行く王子の物語は(劇中でも、一番面白い、という台詞があるほどに)、祝祭感に溢れていて、実に楽しい感じが素敵。単に捜しに行く、というだけの序盤だけれど、真ん中で一人ずっと寝ている男を囲むように星を置いて、ステップを踏むようにぐるりと一歩ずつ一回り、さらに途中でもう一人を伴に連れ、二人でダンスをするようにもう一回り、というシーンが実に美しく、そして胸躍るようで楽しいのです。

語られる物語で一カ所にやけに繰り返し出てくる「壁ドン」を芝居で言葉として使ってるのは初めて観た気がしますが、その瞬間に客席の(おそらくは若い)女子が沸くのもちょっと楽しい。

正直にいえば、囲み舞台でしかも客席が高いという状況では動きが少なくて座っていることの多い役者が見切れてしまうことが多々あるのは惜しい感じ。物語に対しては大した問題ではないのですが、どの人のどの表情を切り取って観るかというのが観客に任される芝居というメディアだからこそ気になること。

文集委員の女子を演じた関亜弓は伏し目がちな女子っぽさがちょっと惚れる感じ。彼女を観るなら舞台向かって左側手前のあたりを。アンドロイドを演じた村上玲は気の弱さからちゃんとハッピーエンドに物語を運ぶ力強さ。真ん中で寝ている男を演じた上野友之を役者で観たのはもうずいぶん久し振りだけれどやけにくたびれたオヤジっぽさ(だけど大学生のバイト、という役だ)の、彼が作る芝居とのギャップもまた楽しさ。ホログラムというロールでさまざまを演じた富永瑞木、矢沢★(さんずいに光)平、前原瑞樹は瞬間で切り替えるさまざまが楽しく魅力的。

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