【芝居】「花子フルメタルジャケッ娘」ハリケーンディスコ
2013.9.7 19:30 [CoRich]
8日までトランスミッション。100分。
福岡・中州のしけたスナックのホステスや店長、用心棒。若い女は華やかな芸能界の夢を抱き東京に出て行ったが、悪い男に騙され金を取られた挙げ句友人とともにストリップ小屋に売られそうになる。すんでのところで妹は逃げだし、福岡に戻るが、友人はストリップ小屋に連れ戻されてしまう。
取られた金を取り戻し、友達を救い出さないと、とホステスたちは東京に向かう。ストリップ小屋の用心棒はダイナマイトを操り容赦のない男だった。
食い物にされた若い女、それに復讐しようと東京に乗り込む大人たち、大人の哀しさ事情は匂わせつつも、物語はごくシンプルに、日活だとか大映風味な昭和な香り濃密な痛快娯楽を、この小さな劇場でやってしまうというのが身の上。
上半身ハダカで刀を片手に凄んでる男、それに寄り添う少し抜けた風情の女、あるいは気の弱いストリップ小屋の男に、それをむしろ食い物にする容赦ない用心棒、昔の因縁ありつつも完全には縁を切れない気丈な片目のストリッパー、あるいは中州の人情厚く商売は下手そうな経営者や、凄みはありそうなのにあんまり役に立たない用心棒、爆弾娘のようなホステス、目がうつろだけどそれに寄り添い続けるもう一人、東京で何かあったらしいオカマなお姉さん、あるいはストリップから逃げのびた幼い女と、ストリップを続けることになってある種あきらめ、人情にからめとられる友達。どの部分を切り取っても、脂っこくてカロリーが高くて胸焼けしそうなキャラクタたち。人情をだったり想いだったりという昭和のフォーマットをきっちりなぞりながら、でも実際のところは人物をそれほど深く掘り下げるよりは「そういう借景」を迫力もって見せるところが真骨頂。
ストリップ小屋に売られ、人生諦めた感じになった若い女がつぶやく、そこで世話になり生活をしていってそれを裏切れないというのはいい味わい。
なにより後半の漫画のような展開がすごい。金を取り返したホステスとその腐れ縁の二人がバイクで一路南下し福岡に向かうのを、ダイナマイト片手に爆破テロよろしく日本のそこら中で爆破事件を起こしながら追いかけてくるのは(実はそれほど丁寧に描いているわけじゃないけれど)、ほとんど漫画のコマ割りが目に浮かぶよう。それを支えるのはバイクにまたがるふたり、というシーンで、扇風機で風を起こし、ライトを客席に浴びせるというところまでは思いついても、そこから急角度でカーブし、タイヤを軋ませながら止まる、というのを、あんなにも時間をかけて(で、その表現としては正直スピードは欠けたとしても)大がかりに見せる、という壮大に無駄な感じにしても、体がとばされるほどの威力の拳銃、という設定を生かすために、体を吹っ飛ばすためだけに、インパクトドライバーでボードをたててみせるだの、物語に対しては明確にノイズやマイナスになりかねないあれこれが実に楽しい体験を生むのです。
牛水里美が演じる爆弾娘なヒロインがかっこよくて、低い声の魅力とあいまって啖呵を切る姿にしびれます。その相棒を演じた津波恵は静かでミステリアスな雰囲気の魅力。渡辺裕也が演じる中州のスナックのオヤジ、というのが、たとえばカンニング竹山のような人情に厚く、すこし弱気を含みながらも虚勢を張る福岡のオジサン、という風情でペーソスすら。オヤジと云えば用心棒で強面風なのに弱気という造型の竹岡真悟も実にいい味わい。チンピラのオンナを演じた徳元直子はこの座組の中ではほわんとした「スケ」っぷりでなんか見惚れてしまう。ストリッパーの姉さんを演じた土谷朋子は(背中越しとはいえ)スケスケなトップレス姿にどきどきしつつ、姉御っぽさがちょっと似合う感じ。そのストリップに売られた女を演じた藻田留理子は諦観しつつも心の強さが前にでる感じ、その秘めた感じがいい。ストリップ小屋の用心棒を演じた澤唯は斜に構えた感じの格好良さをまとい、まさに絵に描いたような悪役がキマります。なんか惚れてしまうのです。作演どころか音響に至るまで背負う江崎穣はまさかのオカマキャラでちょっとオイしい。
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