【芝居】「OUR TOWN」フライングステージ
2013.9.1 14:00 [CoRich]
新宿二丁目の一角を、ワイルダーの「わが町」のフォーマットで描く80分。8日までOFF OFFシアター。そのあと、レインボーマーチに会わせての札幌公演。
1987年の新宿二丁目の朝から夕方、ゲイバーでアルバイトを始めたダイチ。この町で暮らす一家の大学生の息子、ケンイチ。二人はこの町の小さな予備校で知り合ったが、バイト帰りのダイチを偶然みかけたケンイチが声をかけて久しぶりに再会する。
2000年、二丁目のゲイバーなどと、地元の町内会による共催でレインボー祭りが開催される。そのボランティアスタッフとして参加した二人は久々に再会するが、二人には微妙に距離感ができている。
2013年、町内にある寺の大宗寺境内の墓場に集まる、この町ゆかりの人々、町を見守っている。
数百メートル四方の小さな町。内藤新宿に端を発した飯盛旅籠、色町、赤線として続いてきた町が、赤線の廃止によってあいた店舗のあとにゲイバーなどが増えてきたという背景。フォーマットを借り、wikipedia的にこの町の成り立ちを描きながらも、この町をおそらくは見続けてきたであろう作家が足したディテールが面白い。詳しくはないアタシだけれど、サンモールスタジオやタイニイアリス通いの中で目にした店名、あるいはなくなってしまった公園、店名の変わったスーパーやローカルコンビニに至るまでさまざまのディテールは街と共に歩んできた作家ゆえ。
この町で生まれふつうに暮らす家族に生まれたノンケな大学生と、ゲイバーで働くためにこの町に足を踏み入れたゲイの男、この町の初心者という体裁この小さな町にあるたくさんの店や、神社などを巡るガイドツアー。ごく普通の住宅街といういわば昼の顔と、色街からゲイバーに変遷してきた夜の顔という二つが交錯する瞬間。このシーンで描かれている、若い後輩を連れて店をめぐるというのもちょっといい。自分も先輩にそうして貰ってきたし、後輩にそうしてあげることがうれしいのは年齢を重ね経験を積んだからこそ云えるようになるわけで、それは街の厚みということでもあるのです。
ノンケとゲイ、友人ではあるけれどゲイから好意を示せば警戒されてしまうということ、それが現実なのだろうけれど、切ない。それでも、町内会と店舗、つまり昼の顔と夜の顔が共同で祭りを開くようになり、それを見守っている過去の人々というのは、この町への愛着と繋がった希望といった作家自身の優しい視線だとも思うのです。
この町の長い時間、さまざまな人々をたった7人で。母親を始め女性役を演じさせれば安定な石関準、誇張したおネエキャラの奥に厚みを感じさせる岸本啓孝をはじめとした常連で安心な役者陣たちが静かに紡ぐ物語は、それゆえに街への愛情に溢れているのです。
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