« 【芝居】「God save the Queen」東京芸術劇場(芸劇eyes) | トップページ | 【芝居】「冒した者」葛河思潮社 »

2013.09.19

【芝居】「犬、だれる」HOBO

2013.9.15 18:30 [CoRich]

ラッパ屋、おかやまはじめが作演の劇団。16日までサンモールスタジオ。100分。

南の離島。観光資源に乏しく訪れる人もそう多くはない。ある者は志してある者は流れるようにして移住してきている人々も居る。民宿を営む男から紹介されて一軒家に住んでいる男女。ダメ男ばかりにあたって来た女がはじめて真っ当な男に出会ったのだが、男がやっとの想いで育ててきた畑は台風で駄目になってしまい、落ち込んでいる。女はスナックで働いていてそれが収入の全てになっている。スナックのママと恋仲の男はツアコンをしているが少々怪しい。島の観光をもり立てようと役場の男はやっとの想いでご当地ゆるキャラの着ぐるみを作り、この家の男に中に入って欲しいと頼む。
島中でひんぱんに見つかる不発弾がまた見つかった頃、この家の女の妹が訪れる。駆け落ち同然でここに移り住んだ姉を見つけたのだ。

良くも悪くもオジサン、おばさんたちの大人になりきれない馬鹿騒ぎ。そこをペーソスに逃げるのではなくて、くっついてみたり、離れてみたり、恋心だったり、想う気持ちだったり。そういう意味でやや似ている ラッパ屋がわりと生活に余裕がある人々が暮らす中の恋心とか親のことという童話な感じ。HOBOはそれとは違ってもう少し生活に余裕がない人々の話という感じです。それはおそらく年代だったり、作家がどうやって暮らしてきたかということが反映される感じがします。

不発弾が沢山みつかる島、ならばそこに手榴弾があっても不思議はありません。今作でこの手榴弾を「かんしゃく玉」(青空文庫)な感じでため込んだことを放出するというのも女たちの物語の一つなのです。

市場に出回らない魚のネタはちょっとおいしい。脂がたっぷりで消化されないので、そのまま尻からオイルが自覚症状のないまま垂れる、という設定は絶妙ですが、それ食べた男たちがみんな紙おむつを穿いてうろうろする、というのはそういう場面が面白いんじゃないかという遊び心。とはいえ、面白いシーンが数多くあるけれど、それが物語に還元または収束していくものがあまりない、というのは惜しい感じ。

松本紀保はだめんず、という造型だけれど、まっすぐ信じているという説得力。冒頭のステレオの前で居眠りしているシーンがやけに美しい。 小林さやかは割と珍しい肉食女子の造型でがっつり、こうやって言い寄られるがわになりたいものだと、いうのはアタシの勝手な気持ち(笑)。 有川マコトは静かでちゃんとしているのに、台風で畑がやられたことによって凹むというちょっと気持ちが弱い感じ。そういう意味では本間剛も勇気が出ないという造型。なるほど、女子は元気で男子は元気がない、という昨今の感じ。 高橋由美子はママだったり少女だったりな感じに見えるのが不思議。 林和義は人のいい、という感じだけれど、要所要所で目が笑ってない怪しさ。怪しいという意味では犯罪を犯して逃げてきた、という古川悦史の役もまた陰影を作っています。

|

« 【芝居】「God save the Queen」東京芸術劇場(芸劇eyes) | トップページ | 【芝居】「冒した者」葛河思潮社 »

演劇・芝居」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【芝居】「犬、だれる」HOBO:

« 【芝居】「God save the Queen」東京芸術劇場(芸劇eyes) | トップページ | 【芝居】「冒した者」葛河思潮社 »