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2013.08.26

【芝居】「音楽と乳房」池上さん、他

2013.8.24 17:30 [CoRich]

池亀三太の新しいユニット。短編集で構成し、二つのバージョンを交互上演。こちらは落語・岸田國士の既存戯曲二つに彼の新作を一本で構成。25日まで参宮橋トランスミッション。65分。

先輩にスタジオに呼び出された後輩たち。いい歳をしてバンドを始めようというが、後輩たちは今更な感じで乗り気にはなれない。現れた先輩は東京に居る後輩がライブハウスのブッキングをしてくれて、一気に東京でデビューできちゃうのだと云う「スタジオの入り口で」
働かない亭主をやっとの想いで仕事に送り出したが、すぐに戻ってきてしまう。財布を拾ったのだといい、仕事にも行かず酒を呑んでしまう。翌朝、目を覚ました亭主に妻は、そんな夢まで見てしまうなんて情けないといい亭主は改心して仕事に精を出す。「シバハマリミックス」(原作・落語「芝浜」)(wikipedia)
飼っている犬が近所の靴をくわえて持ってきたり、近所の鶏をおそったりする。お節介なご近所が近所同士が気持ちよく過ごせるように直接話す場を作ろうと言い出す「犬は鎖につなぐべからず」(原作・岸田國士)(青空文庫) (1)

当日パンフで主宰自らが云うとおり、節操がなさすぎるラインナップだけれど、いわゆる現代口語演劇から落語に至るまでなバリエーションが楽しい。

「スタジオ~」は作家がめいっぱい得意な地方都市(勝手にアタシは北関東だと思ってるけれど、作家自身の故郷・佐賀でもしっくりくる感じ)の若者たちの風景。東京に出て行くことを諦めきれずに、しかしそのために着実な何かを積み上げることもしない感じだったり、東京といってもやや微妙な三鷹のしかもライブハウスのアルバイトだとしてももうめいっぱい東京をカサに着る感じだったり、という東京と地方というある種の格差を地に足がついた感じで説得力を持って描きます。だめなのにいろいろ行き当たりばったりな先輩、しっかりした妹、断りきれないからここに来ちゃったけれどもう我慢ならない感じの後輩たちにとどまらず、東京に行った後輩がほんとに邪悪な感じで描かれてるのがちょっとおもしろい。先輩を演じた遠藤真太郎は心底苦手なタイプだけれどしっかりとした造型。最後に残る男女二人を演じた曽原達裕と寺戸真里奈のシーンが実によくて、だからこんな街も嫌いなんだといって女が大声で泣き出すシーンがじつにいいのです。

「シバハマ~」は有名な落語の演目を、ぎゅぎゅっと圧縮する20分弱。夫を想う妻の勇気ある行動と結果としてそれに応える妻の夫婦愛が描かれることが多いのだけれど、それは序盤に前の「スタジオ~」から受ける場面を置くだけで、ダメ亭主に尽くす妻の想い、つまり夫婦愛をそこで語ってしまって本編でほとんど触れない感じにするのはちょっと新鮮な感じがします。妻を演じた横井恵美、ダメ亭主を演じた田島慶太のかけあいが楽しい。現代的な語り口にしてあるけれど、物語の骨子はほとんどいじらないのも潔いのです。

「犬~」はナイロン版を観てるはずなんだけれど、例によってすっかり記憶になく。飼い犬をどうするのかを相談するくだり、慇懃無礼だったり、あてこすりだったり、この会議を集めた男のお節介と無責任が同居する感じなのも、日本人の会議らしくまとまらない雰囲気が存分に。

どういう意図で主宰がこのラインナップを選んだかはわからないけれど、新作の自分の物語も、名作のリミックスにしても、あるいは名作をほぼそのままやるというやり方にしても、いろいろ試している感じがあって、もしかしたらそれは樽に仕込む前のウイスキーの原酒のような危なっかしさも、あるいは癖の強さも混じっていたとしても、こういうさまざまをやっちゃうし、そういう役者たちを集められる、ということは彼自身の覚悟を見るようで、ちょっとドキッとしてしまうのです。

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