【芝居】「お酒との正しい付き合い方」月刊「根本宗子」
2013.8.16 16:00 [CoRich]
バー公演が丸一周年、看板女優と主宰による二人芝居40分。18日まで四谷三丁目のバー・夢。
朝から夕方まで連日行われるマンションの外壁工事がうるさくて、夜勤の看護師の姉とキャバクラ嬢の妹の姉妹は眠るために午前中から酒を飲んで午前中なのにべろべろになっている。が、やっぱり工事の音はうるさくて寝られない。姉妹は壁に貼ってある好きなKAT-TUNのポスターをつまみに話をする。
当日パンフによればそれほど酒を呑まないという作家、彼女から見ての酔っぱらいの会話を彼女なりのリアルで描く、という趣向だそう。 意識的かどうか、コントのようにぺらっぺらに薄い酔っぱらいを造型。同じことの繰り返しだったり物忘れだったりとの典型的に描きながら、時に大家に家賃の割引を交渉しようというナイスアイディアが出たりもするけれど会話がおぼつかなかったり、あるいは電話したときだけ工事が止まるというコントっぽいシチュエーションを通して酔っぱらいを描きます。
姉妹はアイドル好きだよねえというあたりからが、作家の本領発揮。コンサートで私に手を振ってくれたと喜ぶ(後からファンになった)姉に、そんなのは誰もが通ってきた道だと説く妹。この距離感の差が巧い。かと思えば、明らかにアイドルの偽物からの迷惑メールを真に受け、アイドルとつきあっているとまで思いこんでる妹、止める姉というのもいいバランスの会話。
かと思えば、妹は終盤に至りアイドル自体が虚構で、それを信じさせるというのがアイドルの力、自分がそう思いこんでいればそれは真実なのだと、突然哲学めいたところに切り込み、写真週刊誌にアイドルの男女関係が載るというリアルに対しては突然醒めてしまうという着地が見事。酔っぱらいという枠組みのおかげで、時に真理を突くような鋭いことを唐突に言い始めてもそんなに違和感がないのがすごい。あるいはネタ的に挿入される「冷静と情熱のあいだ」という言葉が、この後半部分を端的に表しているのも楽しいのは、まあ、「あまちゃん」にずぶずぶハマっているからなんですが(笑)
信じればそれは真実になる、というネタで、工事だってしてないと信じれば、というのは物語全体のオチとして機能しているかどうか怪しいところだけれど、落語のいくつかのサゲがそうであるように、延々続くかもしれない物語(あるいは会話)を止めるためだけの役割、という感じてもあって、この軽い感じはちょっといいなと思うのです。
短い時間で、隙間に詰め込みやすいという意味で、あるいは新宿から高速バスを使うアタシにとってという意味でもいろいろありがたい公演のシリーズです。前日に観た七里ガ浜オールスターズの役者7人、しかも貸し小屋の公演と同じ2800円という木戸銭(で、こちらは関係は不明なれど、根本ビルだ)が妥当かどうか、ちょっと考えちゃうのは事実なんだけど、紡がれる物語の時にみずみずしく鋭い感じが好きで、やっぱり通ってしまうのです。
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