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2013.08.26

【芝居】「癒やし刑」ガラス玉遊戯

2013.8.24 14:00 [CoRich]

アタシは初見のガラス玉遊戯。25日まで王子小劇場。105分。

人間関係などで苛つく感情をプラスの感情に変換したり、過去の嬉しかった体験を繰り返し脳に送り込む研究がすすんだ。薬剤では2時間が限度だが、同じ機能を実現するメンタルペースメーカーという機械を体内に埋め込むことができるようになった。費用はまだ高く大企業が心の病を患った社員に対して福利厚生として提供するような形態が多い。
トンネル事故で助かった妻と助けられなかった娘。両親は娘が見捨てられたと深い傷を負っていて、助けた男すらも逆恨みに近い状態になっている。夫はそのストレスを装置によって解消していて、クリニックの職員になっている。
提供する会社の広報誌のライターがクリニックを訪れる。ストレスから仕事にいけなくなって2年経つ男とその妻、人間関係のストレス、事故の心の痛みから回復できない男などがクリニックに通っている。記憶の改竄に等しい行為に違和感を持つライターは患者たちに個別に話を聞こうと考える。

もしかしたら将来できちゃうかもしれない、ストレスコントロールの技術を描いたSF仕立て。SFが流行らないといわれる昨今だけれど、見応えのある物語を作り出します。

チラシや当日パンフで物語の主軸として据えられているのは事故で娘を失った夫婦と、娘を見捨てたと思われている男の関係。妻だって偶然助けられただけなのに、娘が見捨てられたというのは逆恨みにも近い感じになっていてどうにも同感できる感じにならないのが勿体ない。ずっとその男と妻と娘だけでドライブにでも行っていた、という恨まれるだけの別の理由があるのだと勝手に補完して読みとってたりもしましたが、たぶんアタシの勇み足。

もうひとつの軸となるのは、そのメンタルペースメーカーによって起きる事故などのマイナス面を目の当たりにしてもなお、その機械の裁ち難い誘惑から逃れられない人々のものがたり。 ストレスを受けるということは回避すべき危険があるということなのに、そのストレスを前向きのエネルギーに変えることが、実は危険な側面を持つのだということを背景に持ちながら、しかしそのストレスのない(というよりはあらゆることがポジティブに感じられる)生活をもう捨てることができない人間のある種の弱さを静かに描きます。 実際のところ、こちらの軸のほうが物語に説得力があるように思うのだけれど、チラシなどでは触れられていないというのはちょっと不思議な感じがします。

正直に云うと、物語の世界を支える肝心のメンタルペースメーカーの着想はおもしろいのに、描き方の詰めが少々心許ないのが勿体ない。機能の説明がややぶれる感じもします。昔のポジティブな感情を増幅して一種のドーピングを行う機器という説明と、ネガティブな感情を変換していわば記憶の改竄を行うのだと描かれたりして、どういう機械なのかよくわからない感じになるのです。あれ、もしかしてネガティブな感情のエネルギーで昔のポジティブな感情をドーピングするってことだったか、あれれ、ちょっと私の記憶が曖昧ですが。

ライターを演じるヒザイミズキが静かに燃やし続ける正義感の造型をしっかり。観客の視座に一番近くフラットに。優しくいい人にみえてしっかり経営者という食えない男を演じた林剛央、クリニックの中に居ながらすこし批判的な位置に居る宮崎雄真の造型がちょっといいし、この機械に翻弄される患者たちの中でも気持ちが揺れ動く女を演じた菊池未来に説得力を感じます。

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