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2013.08.18

【芝居】「ずっと二人で歩いてきた」キャラメルボックス

2013.8.14 14:00 [CoRich]

「雨と夢のあとに」(初演)の後日譚という形で描くもう一つのものがたり。当初予定されていなかった大阪での公演が追加されています。110分。17日までサンシャイン劇場。

大学生になる女は東京に引っ越してくる。心配した実家暮らしの友達が一緒に暮らそうと説得するが一人暮らしに選んだアパートの隣には酪農を学ぶ大学院生の男が住んでいた。母代わりの伯母夫婦は苫小牧で男が戻ってくるのを待望しているが修士、博士と帰郷を延ばしている。
男は子供の頃家を出た母親を追って札幌から東京への兄との道中を描いた児童文学が認められている。その兄はすでにこの世には居ないが、男にはその兄の姿が見えていることに、女は気づく。自分も5年前に経験したのと同じことが起きているのだ。

人気作の登場人物の一部と断ち切れない想いゆえに現れる幽霊という枠組みを借りながらも、ぎゅっと濃密に短めな5人構成に。前作では子供だった主人公・雨が自立した大人への一歩を踏み出そうとする瞬間を淡い恋心の瑞々しさとともに描きます。

地の物語に加えて、兄と弟の物語の朗読を挟んでいく構成。母に捨てられたこと、母に会いたいという弟の想いを実現し守り抜こうとする想い。万引きやヒッチハイクに象徴される守るためなら何でもするしやり抜くという行動力とその強さを描いていきます。

愛する人を残したままの死という無念ゆえに現れる幽霊、残された側がそれに囚われ続けると云うこと。物語は物語として、それでももう死んでいるということも幽霊は居ないのだと自覚したとしても、突然の人の死はそれが気持ちの上で近しい人であれば、生活のふとした瞬間に時々ふっと現れるということがあるということもなんか実感として感じる、というのはアタシの個人的な体験ということかもしれませんが。

大学生の女を演じた原田樹里は時にはしゃぎながらも真っ直ぐさを前面においた造型。カーテンコールの明らかにアドレナリン出まくりな舞い上がりっぷりも微笑ましい。それを支える友人の男を演じた筒井俊作はコミカルに造型しながらも、友人を心配する気持ち、優しさが印象的。想いが片想いっぽいのもちょっといいし、終幕で新たなステップを予感させるのもちょっと幸せな気持ちに。隣に住む大学院生を演じた多田直人は繊細な役をしっかり。物語のキャラクタではないけれど、この静かなままにツッコミを入れるというのもいいスパイス。兄を演じた加治将樹は気性が荒くしかし優しさというある種のヤンキー造型はシンボリックにすぎるといえばそうだけれど、私は割と好きな人物だったりします。大学院生の母親を演じる坂口理恵はもう、私は彼女が舞台に居るだけで喜んでしまうので冷静な評価じゃないけれど、コミカルも優しさも厳しさも併せ持つ母親像を好演。

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