【芝居】「三毛猫と退屈」池上さん、他
2013.8.24 20:00 [CoRIch]
男に久しぶりに電話してきた女、8年ごとにあっていたのに、80年も間があいてしまった。あってみることにする。「君の君は僕」(全編公開)
女子小学生三人が好きな男の子の話をしている。いっせーの、で云ってみれば三人とも同じ子が好きだということがわかって、八王子に呼び出して三人で告白しようということになる「10歳の恋模様」
仕事がない夫、友人たちは仕事をもってくるが、じっさいのところ気だてのいい妻のために、ということがあからさまにすぎる。この夫婦、夫婦は気にいらないストレスなことがあると、かんしゃく玉を鳴らす。「かんしゃく玉」(青空文庫)(1,
2)
男の部屋には見知らぬ女が居座ってる。男はバンドマンだが、それをストーカー行為をしているのだ「対岸の人」
夫を亡くしている妻はふさぎ込んでだれとも会わないことにしてる。訪ねてきたのはがさつな大男「熊の吉田さん」()
「君~」はなんか壮大で詩的な感じすらする一本。久しぶりに電話する異性のちょっとどきどきする感じを8年とか80年という周期で描くのがなんかちょっとロマンティック。盛り上がったのに、あっさり女が別れを告げるというのも、そういう俯瞰してる感じで楽しい。輪唱ぽい終幕の演出もちょっとおもしろいけれど、物語というよりはダイアログと雰囲気が好きです。
「10歳の~」は恋に恋する小学生女子三人組のきゃっきゃする感じ。それでも三人一緒に告白しようという感じもなんか幼くて可愛らしい。直接自分を好きか訊くじゃなくて男の子が好きそうな消防車とか昆虫とかマクドナルドを例に挙げて(さらには意味不明なほどサッカーチームやクルマを挙げていく)、それと私どっちが好き、と二分法で質問していく感じも、嫌いな物とまで比較してすら、それがことごとく自爆していくのも、この年代の男子の恋心のなさ加減、恋に醒めたら女子たちが罵倒しまくるのもコミカルで楽しい。こういう軽快な会話劇、しかも小学生とはいえ女子三人(三澤絢香、岩井由紀子、大河原恵)の破壊力が凄い。
「かんしゃく玉」は岸田國士の一編。わりと原作そのままの描き方という印象だけれど、仕事に困る加減とか、夫の友人たちが妻によく思われたくて、しかも妻の方がきっと目があってというあたりが不思議と今に置き換えてもしっくりとはまる感じ。もともとはずっと小さいかんしゃく玉をハンドボールほどの大きさに設定して、爆音を重ねるのは、ちょっとおもしろい演出。もともとはうじうじ思い悩んでる感じを些細にぶつけるもの、という感じのものが、全身の恨み言を投げつけるようになって、印象が変わります。下手端に座ってしまったアタシはかんしゃく玉が破裂するたびに下手奥で何かが起きているのを見られなかったのは少々残念。
「対岸の人」は、ミュージシャンをストーキングし続ける女、忍び込んだところを家主に見つかってからの一場。冷静なようでいて向こう岸にいっちゃってるし、それなのにステージの虚像に憧れてるじゃなくて、肖像権といえるほど売れてないとか、先はどうなるかなんてことを冷静に判っているのに、それなのにストーカー、というのがちょっと凄みもあって怖い。それなのに突然冷めたように距離を取る女を逃がしがたいと思ってしまうミュージシャンのすとんと切り替わるオチが見事。ストーカーを演じた大河原恵はやや地味めに見えるけれど、それゆえに熱い気持ちの間違った方向の凄みが強い印象を残します。ミュージシャンを演じたトクダタクマはどんどん巻き込まれる感がコミカルで楽しい。
「熊の~」は原作からしてぶっ飛んだ話だけれど、熊を演じる吉田壮辰の見た目の熊っぽいインパクト、そこから徐々に可愛らしい感じになっていくのがちょっといい。言葉遣いの古めかしさをそのままにした仕上がりだけれど飽きるという感じではなく、作り物感が前面に出るようでこれはこれで面白いなと思うのです。
素早く書いてささっと芝居に仕上げてしまうという持ち味が若い作演出らしくて気持ちいい。それは作品というだけではなくて、役者をさっと集めてだったり、ほぼ素舞台に脚立とライトぐらいの仕込みで公演を打ってしまうという身軽さが実にいいなと思うのです。なるほど、脚本からワークショップ、仲間内の集まりまでなんでも請け負います、当日パンフのうたい文句そのままだなぁと思うのです。
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