【芝居】「ドレッサー」シスカンパニー
2013.7.28 13:30 [CoRich]
ロナウド・ハーウッド作、戦時下のイギリス、シェイクスピア劇団のバックステージを描く160分(休憩15分)。28日まで世田谷パブリックシアター。
戦時下のイギリス、毎晩のように空爆が行われるが、その中でシェイクスピア劇を上演する旅回りの一座。若い役者、優秀な役者は兵役にとられ、座組は素人同然だったり問題があったり。座長は寒い日の昼間、マーケットでコートを脱ぎ捨てて病院に収容されたが、病院を抜け出して楽屋に現れる。夫人や舞台監督は舞台の中止を決めようとするが、夫人よりも長く座長にずっと寄り添ってきた付き人の男は、なんとかするからと説得し、果たして、なんとか、座長は舞台を果たす。
三谷幸喜、大泉洋という人気の組み合わせ。コメディとは云えない物語ともいえますが、人生なんて儚いという意味ではペーソス溢れる感じとも云えて気持ちがいいのです。戦時下でもシェイクスピア劇の上演を続けていたという英国。余裕というか豊かさというかなんかというそんな時代を背景にしながらも、序盤はいわゆるショーマストゴーオンな感じでどたばたと笑わせます。公演中止にしたいという座長をなだめすかし、座組の問題を解決しながらともかく前に進むのです。果たして、幕は空くけれども、上手の舞台袖(STAGE LEFTの文字が見える)でのドタバタ。開幕は舞台袖、その手前に楽屋への廊下、その手前に楽屋、という折り重なる舞台装置。位置関係も、あるいは楽屋から舞台への距離感だったり、あるいは観客の気持ちに近い手前側から、少し遠い舞台、という感じでもあってワクワクするのです。
中盤ではどたばたながら最高の舞台を終えて、後半に至って座長はあっさりと死んでしまいます。が、残された遺書がわりの自伝の謝辞に、自分の名前がないことを知る付き人。自分はついぞ一杯もおごって貰えなかったビールを老いた俳優には与えたり、謝辞にはスタッフに至るまで名前があるのに自分がない。悪意というよりは、あまりに自分に一体だったからという好意的な解釈もできましょうが、物語ではそんなことは描かれていなくて、それゆえに人生の苦みが前面に出る感じ。
橋爪功はワガママ放題の座長に見えて、この役者もスタッフも足りないなかの苦悩する姿や舞台にたつ凛々しい姿、そこからあっさりこの世を去ってしまうという格好良さ。 大泉洋はほぼ出突っ張り。ちゃんと笑わせる前半、こんなに16年も尽くしてきたのに後半で自分が謝辞に登場せず、ビールの一杯も奢って貰えなかったまったく認められてなかったという無念というダイナミックレンジの広さが魅力。 平岩紙は実に可愛らしく、少々色っぽくはちょっと珍しい感じ。 銀粉蝶が演じた舞監、ずっとこの劇団へ持ち続けた想いはもちろん座長に対しての愛情だったりもしたのだ、という時間の重みが印象的。
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