【芝居】「木」ろりえ
2013.8.25 14:30 [CoRich]
ろりえの新作。130分。9月1日までサンモールスタジオ。
火山の島で暮らしている人々。金髪の少年は両親をすでに亡くしていて、森の奥の大木が好きな場所で、そこで過ごしていることが多い。村長の息子で人気者の同級生は仲良くしてくれるが、ほかの生徒たちとはすこし距離がある。ある日、東京から女子生徒が転校してくる。村長の息子は恋心を抱くが、彼女は金髪の少年のことが好きだった。その板挟みに耐えられなくなり、金髪の少年は島を逃げるようにして出て、東京に向かう。
東京に出た金髪の少年は青年になり、行き倒れ寸前のところを救われ工場で働くようになる。やがて恋をして女と慎ましく暮らしているが、目にしたテレビでは、島が噴火し、親の跡を継いで村長となっていた同級生が避難指示を無視して島にとどまっていることを知る。
そう大きくはないサンモールスタジオ舞台中央に顔を模したような大木がどどんと。タイトルそのままだし、客席に入った瞬間のこけおどしというか驚きというのはワクワクとさせるのです。
物語は大きく二つのパート。火山の島に暮らす高校生や人々。合唱コンクールに向けての練習とか、秘密の場所を親友に教えるとか、転校生への恋心とか、あるいは同級生への恋心とか夏休み前後のちょっとざわつく雰囲気。台風の季節の一夜の出来事によってできた気まずさから逃げるように東京編へ。第二部とクレジットされる後半は、青年となり働く日々だったり、その先の愛する人との生活を静かに描きます。男子のハダカとかのちょっと笑わせるような要素を盛り込みながらも、助けてくれた社長の息子への恩義とか、成長するすがた。あるいは神田川よろしく、つつましく暮らす若い男女の姿。
終幕近くに至り、噴火する火山の中で一人残った親友に出会うために島に向かうというものがたり。男は一人島に向かうけれど、残された女は宿った新たな命に嬉しい気持ちとなっているシーンは美しい。
正直にいえば、NHKのあまちゃん、な枠組みな感じは強いのです。地方と東京編という分け方や、災害を軸にしての再会の物語(とはいえNHKの方もこれからですが)だったり。
金髪の少年を演じた志水衿子は、久しぶりに拝見するけれど、こんなに巧い女優だったかと思うほど、抑えつつも芯の強さを印象づける好演、喋るときの多少の表情の癖が惜しい。そのあとに青年、中年を演じた天野峻、山岸拓生もそれぞれの年代な雰囲気をきっちりと描きます。親友を演じた高木健の格好良さも歳が進んでからの感じも、あるいは転校生を演じた中村梨那のちょっと大人びた陰のあるような魅力も印象に残るのです。安藤理樹の漁師ってのも面白い。制作を兼ねる徳橋みのりの終幕の表情の美しさも印象的。
もうひとつ正直にいえば、物語はおなかいっぱいというほどに濃密に詰め込まれているし決して飽きるということではないのだけれど、実時間の長さが少々損をしている感じは否めません。それぞれいちおうの物語はつけているけれど主となる物語には直接関係ない地元のカップルや妖精、合唱コンクールという小技それぞれもおもしろいのに、物語の柱に寄り添わないので単に使い捨てになっているようになっていて勿体なくて、それゆえに全体を長く感じるんじゃないかと思ったりするのです。90分ぐらいに圧縮したらなぁ、と、ろりえを観るたびに思うのです。
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