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2013.08.18

【芝居】「cocoon」マームとジプシー

2013.8.17 15:00 [CoRich]

今日マチ子の代表作と云われるマンガで、沖縄戦のひめゆり学徒隊をモチーフにしながらもフィクションである原作で圧力のある舞台を作り出す130分。15日までの予定が18日までの延長上演。東京芸術劇場シアターイースト。

南の島、中高一貫の女子校、クラスではいつものように授業もあるし、小さなグループで噂話をしたりもしているが、戦争中。爆撃もあるしガマ(防空壕として使われた洞窟)もある。戦況は悪化し、看護隊としてガマに作られた病院に送られる。敗戦は濃厚になり、負傷兵はあふれ、食料も薬品も不足し、爆撃も激しくなってから、この壕を軍隊に明け渡すために看護隊を解散するよう軍から命じられる。海まで走り切ればあるいは助かるかもしれないという気持ちで教師は逃げ切れという。

今日マチ子といえばアタシにとっては週間モーニングの「みかこさん」がなじみ深い漫画家なのだけれど、この絵柄で戦争をモチーフにしたフィクションなのだということにまず驚きます。。まだ原作を開く勇気はないけれど、チラシにあるとおり、確かに「憧れも、初戀も、爆撃も、死も」描かれます。舞台は現代の女子高生たちの日常という雰囲気で始まるし、過去にあった沖縄戦の悲惨を描きつつ、「これはいつの時代の話だろう」と現在のさまざまな危うさへ繋げるような構成。が、作家にはそういうこととは違う何かの意図もあるようで、ほぼ日に連載された作家による稽古場日記では「かわいそうな少女たち」を描くのが目的ではないといいます。悲惨さにあふれる中でも中でも少女たちは楽しいことを見つけて嬉しくなったりおしゃれしたかったり、絵を描いたり描いて貰ってという小さなことを積み重ねたり、あるいはずるかったり、あの子イヤだなと思ったり、仲良くなったり、喧嘩したりという日々。生き続けていたはずの少女たちの日常を描く、のだとアタシは感じたのです。

正直に云えば、たとえば「はだしのゲン」だったり「ふたりのイーダ」だったりと、映画にしても演劇にしても戦中を描くものはことごとくトラウマのように拒否反応のあるアタシです。NHKだったりのドキュメンタリーはきちんと見られるけれど、そこに「物語を乗せ」て心を動かそう、という感じがちょっと苦手だったりするのです。今作もそういう意味では同じようなテンションの低さで望んだアタシです。もっと正直に云えば、(ダンスのように動き続ける)女優たちが疲労していく様だったり、あるいは単なる大音響だったりに見続けてしまったけれど、これはこれで相当に悪趣味な感じではあります。

たぶん絵柄のこの柔らかさゆえに悲惨な物語とのバランスなのでしょう。生身の人間が演じるには、(砂の上を走ったり滑ったりということも含めて)リスクが高い芝居だと思うのですが、きっちり演じきっています。原作では兵隊さんなど男たちは「ぼんやりとした白い人間の形をしたもの」とだけ描かれるようですが、流石に芝居でそうするわけにもいかず、生々しさが先に立つのは痛し痒し。

もうひとつ、奥行きを持たせた舞台で両脇をコの字に囲む客席という構成は三鷹の時と同じだけれど、あのときとまったく同じで正面に対してしか芝居を構成できないということはまったく改善されていません。窓かマンガのコマ割りだったりという木枠の動かしかた、両脇を前後に動く背の高い台車が視界を遮って観客のストレスになるということだったり、ならば横の客席からは別の視点のように舞台が構成できているかというと、アタシにはまったく感じられないのです。たぶん正面ならば物語に没入できるのでしょうから脇の客席をつくるというのをあきらめるべきなのだと思うのです。(指定席なら安くする手もあるでしょうが)

当日パンフは繭の形にかたどられ、うっすら黄色でタイトルが印刷されていたりと、手作り感満載だけれど、きちんと物語の世界に寄り添います。 マユ(繭)を演じた菊池明明は格好良くて瞬く間に女子校の「王子様」になるけれど、少なくとも舞台の上では「彼」だということは明確に語られない感じ。サン(蚕)を演じた青柳いずみはどこまでも少女、相当にストレスのかかる役だけれど。途中で袖のないワンピースになるのが他の少女たちとは少し違う立場に「羽化した」のだということをみせるようで印象的。 語り部を兼ねるサトコを演じた吉田聡子は、マームとジプシーの世界をしっかりと作り、少女の意地悪さみたいなものが見え隠れして楽しい。教師を演じた山崎ルキノはこれも辛い立場の役だけれど、確かに誠実な役をしっかりと造型。

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