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2013.07.14

【芝居】「根本宗子お祭り公演~バー公演がバーを飛び出した!~」月刊「根本宗子」

2013.7.8 15:00/18:00 [CoRich]

バー公演で作り続けてきた作品から5本を選んでお祭り的公演に。9日まで浅草・木馬亭。一本あたり40分で幕見も設けられています。

■昼の部■
開演直前の鏡前、急な役者降板でナーバスな俳優や、臭いのする食べ物で周囲に顰蹙を買ってる女優など、開演時間は刻々と迫る「ひかる君ママの復讐」(チームA)(1)
お遊戯会の演目を決めるために早く集まった保母たち、一人が遅刻してその見え透いた嘘の言い訳を暴くと「保母、処女」(チームB)(1)
高校の修学旅行で関西から着た女子高生たち、3人がハブられていることを知った仲居はそれを直そうと「はなちゃん」(チームE/新作)

■夜の部■
書けない作家に書かせる相談に集まった女優たち。今の恋人の看板女優と元恋人の中堅女優と、新人女優と。「喫茶室あかねにて。」(チームC)(1, 2)
OLと昼休みに待ち合わせた劇団員の女。好きなアイドルのCDのイベント券が気になって一緒に開けようということになったのだ。「改正、頑張ってるところ、涙もろいところ、あと全部。2013年初夏」(チームD)(1, 2)
「はなちゃん」(昼公演と同じ演目とのこと。これを観ないで退出しました。)

一本あたりは40分弱の上演時間に対して、幕見も用意する関係か各演目野間を50分程度あけているため、休憩がわりと長めなのは痛し痒し。でも休憩時間が中入りっぽく、ビールおつまみが買えるってのはちょっとうれしい。おかげで各演目ごとに缶ビール一本ずつ開けるはめに(飲み過ぎです)

バー公演は40分弱でくだらなさ前面押しのシリーズ。あのバーという場所ゆえのぐだぐだ感と濃密さというのが持ち味。木馬亭という寄席(浪曲の定席)の舞台に乗せることで、場所の空気感が一変。それは必ずしもプラスばかりではなくて、客席と向き合い分離された中で描かれることに耐えうるかどうかというのが演目によってはっきり分かれる仕上がりになっています。 そもそも、この演目、どちらかというと見た目にはコントに近いわけですが。

「ひかる君〜」は、それぞれの俳優たちの素のように見せる鏡前という場所のぐだぐだな会話劇。狭さゆえに小劇場の狭小な楽屋という持ち味の物語。それを広い舞台に乗せると少々厳しい感じは否めません。なんか間があいてしまって、ニオイが嫌なら離れればいいじゃん、て感じになってしまうのが惜しい。大竹沙絵子演じる、喉の弱い、周りに気を遣いまくりという女優の造形がけっこう好き。根本宗子を、中途半端な美人と言い放つ台詞(自分で書いてるわけですが)もちょっといい。墨井鯨子のあまりに軽い感じも、梨木智香の仕切りっぷりも実に気持ちいい。

「保母〜」も動きの少ない会話劇ゆえに、この場所ではちょっともったいない感じになってしまいます。それでも三人のバランスがくるくると変わる様はこのホンの魅力で、冷静にしかし拗らせた女を演じた根本宗子、すぐわかる嘘を平気でついてしまう女を演じたはしいくみのふてぶてしさもいいバランス。なにより、付和雷同から豹変する女を演じたあやかの振り幅、表情の豊かさが印象に残ります。

「はなちゃん」は新作なのでこの劇場用に。バー公演というよりはどちらかというとゴールデン街劇場での公演(1)のスタイルに近くて、頑張って鍛錬の日々、という体裁で時間の経過を描くのも同じ。もっとも描いてることは本公演よりはちょっと軽くて、それゆえ馬鹿馬鹿しさで押し、微妙に(おそらくは女子的な)中二的な下ネタ感をまぶしつつ、その中二が考える大人の女性たちの描き方のバランスもいい。そういう意味では、ハブられからそれを克服するかもしれない日々という微妙なこじらせ感もよくて、もしかしたら作家はそういう拗らせ方をしてるのかな、と想像するのも楽しい。パンツを下げてるとか、あの色気過剰女優とか、あるいはオッパイの形ひとつでハブられるのだというあたり。 女子高生の三人のジャージスカートというダサくて素朴な感じがいい。演じたあやかのセルフレームにほくろという造形にしても、下城麻菜の田舎の女子高生風情感もいいけれど、なにより三つ編みでしかも自分が可愛いという自覚の上に拗らせる、というオヤジ殺しな造形の安川まりにヤラれてしまうアタシです。仲居を演じた大竹沙絵子のパワフルなコメディエンヌが本当に格好いい。

夜の部の再演二本は、梨木智香のあたり役、テンションの高い貧乏劇団員かつ主宰の元カノ「榎本美津恵」をフィーチャー。短い芝居ゆえに強いキャラクタがいることで、コントっぽさが出てくるのが効奏して、舞台に負けないグルーブを作ることに成功しています。

「喫茶室〜」は新たなキャストでしょうかね。安川まりの、美人な看板女優という説得力。反面、泣いてばかりというキャラクタはどちらかというと大竹沙絵子版の方がすんなり感じる気はしますが、甘粕版とも違う新たな魅力。

「頑張ってる〜」はこのシリーズのキラーチューンとでもいうべき強力な物語。実はこのシリーズにはほとんど登場しない、おしゃれOLという役がまた女優の魅力を改めて根本宗子で。それにしても、梨木智香の当たり役ともいうべきこれは本当に好きなのです。強気と弱気が入れ替わり立ち替わりの振り幅もその速度も何度でも楽しんでしまうのです。もっとも、彼女の役がこれだけになっちゃうのは明らかに間違いですが。こんな舞台になっても、というよりはコントとして普通に持って行けそうな仕上がりで、精度がどんどんあがっているのが楽しい。

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