【芝居】「ジャングル・ジャンクション」キャラメルボックス
2013.7.13 18:00 [CoRich]
一部の好事家たちには伝説の、と呼ばれるほどに印象が強かったらしい1993年公演の再演。アタシは初見です。キャラメルボックス初期の作品を上演する企画公演の第二弾として、エンタメ路線まっしぐらな100分。15日までシアター1010。
自転車に乗ったOLが町で男にぶつかってしまってから始まるラブストーリー、脱走囚を追う刑事たちのアクション、世界征服をたくらむブルーナイトに立ち向かう改造人間バイオニックキョウコのSF。三つの物語の登場人物たちがひとつの物語のなかで鉢合わせしてしまう。それぞれの主人公は自分が主役だといって譲らないが、この混乱はもしかしたら3つの物語を平行して読んでいる読者の頭の中の出来事で、このまま混乱したままでは、物語読み進めるのを放り出してしまうかもしれないと思い至って、このまま3つの物語を組み合わせてちゃんと終わらせようということになる。
3つの物語の登場人物たちが、それぞれの背景を持ちながらも協力して一つの物語に収斂させていく、というメタ的な構造を持ちながら、オーバーアクションやコネタを数多く挟み、テンションで乗り切るように作る話。キャラメルボックスっぽくない、と彼らはいうけれど、短期間でつくりあげられるこういうレパートリーがある、というのは確かに劇団の歴史ゆえの奥深さを感じさせます。
キョウコを演じた原田樹里は、線の細さ故にどうなるんだろうと少々不安な感じは否めないのだけれど、物語の構造からして中心に据えられても、きっちり演じきって新たな魅力。そのキョウコを初演で演じたらしい坂口理恵は今作ではその敵役、ブルーナイトを。オバサンだ、と自虐しつつも、軽薄な造型で出てきてすら、客席を一気にわしづかみにする魅力。もう、本当に惚れるほどに好きなアタシなのです。刑事を演じた菜月チョビはなかなか観られないスーツ姿もびしっと決まるのがちょっといい。ラブストーリーのヒロインを演じた林貴子は、パステルな感じの衣装だけれど実は汗だくな感じも今作の感じにはあっててほほえましい。脱獄囚を演じた渡邊安理は、ホットパンツ(死語?)というダイナマイトな色気一杯のの出で立ちに、ほんとに心奪われてしまうオヤジなアタシなのです。
正直にいえば、シアター1010の規模ではこの感じのばかばかしい物語で観客をしっかり引っ張るには役者に相当な技量が必要でそういう意味ではコメディの難しさを感じさせてしまうのもまた事実。もちろん、キャラメルや鹿殺しになじんでいる観客が、こんなことを、とお祭り的に楽しめるのは(アタシだってそうだ)事実なんですが。
そういう意味では(観る予定はないけれど)男性の俳優を中心に据えたもう一つのバージョンの方がパワフルさ、コメディに突っ走るばかばかしさのようなものが前面にでて気楽に楽しめそうな予感もします。
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