【芝居】「変則短篇集 組曲『空想』」空想組曲
2013.7.6 18:00 [CoRich]
2010年初演の短編集をベースに。シアター風姿花伝のプロミシングカンパニーとしての1ヶ月のロングランの初日。120分。28日まで。
ギャルソンは店の準備をする「組曲『空想』〜独奏」
若いカップルがデートに訪れる。男は行きつけだというが、緊張していて「静かな晩餐」
秘書がすぐに辞めてしまうぶっきらぼうで厳しい女社長。新たに秘書となった若い女は構わずに会話してきて「天使が通る」
強盗に押し入ったが成功しなかった。巻き込まれ人質となった男は、犯人に対して自分を殺すべきではない、と説得しようとするが「彼に似合う職業」
デートに訪れたカップル、大事な話があると女を誘ったらしいが、その大事な話はいつまでたっても切り出される気配がなく「賑やかな晩餐」
生徒らしい男が、教師らしい年上の女とカードをめくりゲームをしている。何かをするか質問かを選ばせて、いわれたことは答えなければいけないというゲーム。男は人妻でもある女に恋心を抱いているようだ「アクション、ヴェリテ」
その店にくると、客と店員はあっという間に恋に落ちてしまうという「ファミレス・ランデブー」
年老いた父親と娘。かつては医者につれていってくれなかったり、水泳に厳しかった父親だったが、年をとって弱気になっている。母親は一年前に亡くなっていて、どうも殺されたらしい「毒殺アリス」(日替わりプログラム/A)
夫婦が店を訪れる。妻はネットに書いた記事を出版しないかと持ちかけられていて、夫は快諾するが、その数年後「時をかける晩餐」
ゴミをためこんだ女の部屋を、夜、男が訪れる。男はそのゴミは自分が出したものだという「サンクチュアリ」
普段から通っている店だったが、たまたま普段とは違うランチタイムに訪れると、その店員が襲ってくる「ファミレス・リベンジ」
演奏をするが、一人だけ音が大きくはずれている「ロマンチック主義者のためのささやかな演奏」
閉店後らしい店、話をしている男女、「しりうすぴかぺら」
別れ話をしにきているらしい夫婦。少しの未練がないわけではない。ウエイターはこの二人がずっとこの店に通ってきていることを知っていて「静かすぎる晩餐」
ウエイター、新しいことを始めないか、と語りかける女。「組曲『空想』〜連弾」
初演の時も感じたけれど、レストランを巡る短編の名作「ア・ラ・カルト」をアタシとしてはどうしても意識してしまいます。あれよりはもうちょっと音楽が少な目で、爆笑編も含むバラエティに富んでいるというのが持ち味。
核となるのは、一組の男女とギャルソンによる「〜晩餐」の四本。恋人、プロポーズ、心変わり、別れという流れはレストランを舞台にした物語らしく、ちょっと洒落ていていい雰囲気なのです。バラエティに富んでいて、時間の流れも感じさせて。
社長と秘書の物語もちょっといい。年上が寡黙を通り越して頑固、理由はわからないけれど年下がどんどん距離を詰めていって関係が変わっていく流れ。レストランが格安ファミレス、という振り幅も楽しい。
プロポーズを期待する女を演じた葛木英、ほかではあまり観られないほどの可愛らしく乙女なコメディエンヌをオーバーアクト気味で、好きな方にはたまらないほどに保存版な一本に。ちょい役含めて大部分の女優がメイド服のシーン有りというのもまた眼福。松本紀保をこの距離でというのも贅沢ならば、このメイド服に生足、それも美しいのに見惚れてしまうのです。社長の強気な感じ、マンションの会社員の陰の有る感じのコントラストも鮮やかで。
堀越涼演じる強盗にしても夫にしても、強気と弱気のダイナミックレンジの幅広さとその振れ方の周波数の高さ(早さ)、アタシが信頼できる役者という気持ちを新たに。こいけけいこは、本当にうまくなりつづけていて、格好良さもちょっとバカっぽく見える感じもきちんと。ことに、夫婦の会話の繊細さが印象に残ります。川田希はかなりのパートを引き受けるという負荷の高さ、ことに初演とは異なりアクションをほぼ一人で引き受けるざるを得ない二人芝居はロングラン故に少々心配な気もします。
ロングランの公演、役者もさまざまにバラエティ。 小劇場の役者たちは、アタシが見慣れているからか、まあこなれた感じなのだけれど、座組としてはバランスをまだ測りながらという感じは残ります。それでも、ここから千秋楽に向かって変化していくような予感はあって、それが試せるというのもロングランという場が持つ一つのちから。小劇場ではなかなか難しいことで、それをさらにバラエティに富んだ役者たちが続けていくということの楽しさ。
日替わりの「毒殺アリス」、新作かしら。アタシは初めて拝見した気がします。母を誰が殺したかという父娘の息詰まる会話のバランスオブパワーが次々と変わっていく息詰まる感じが実にいいのです。短編だからできる緊迫感。
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