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2013.07.03

【芝居】「わが闇」NYLON 100℃

2013.6.30 13:30 [CoRich]

ケラリーノサンドロヴィッチの晩年第一作を自称する人気作を劇団40周年記念の一本として再演 (1)。休憩15分込みの205分。7月15日まで本多劇場、そのあと大阪、横浜、北九州、名古屋をツアー。

小説家の父は母と三人の姉妹を連れ、田舎の一軒家で暮らすことにする。母は神経質で気を病み、やがて自殺してしまう。後家はおおらかで明るい性格だったが、姉妹たちとはなじめないまま、それでも十数年は暮らして、ある日突然居なくなってしまう。長女は小説家としてデビューし人気を博すが、やがてそれはやや下火になり、家族の中で起きたことを題材にした小説やエッセイばかり書くようになり、時折若い編集者が原稿を取りに来ている。男は気があるようだが、告白はできない。次女は結婚し一児を設けるが、その姿はなく今は粗暴な夫とこの家で暮らしている。三女は東京で事務所に入って売れないながらも芸能界で仕事をしているが、突然姿を消して、この家に戻ってきている。
小説家の父親は寝たきりになってしまうが、その姿をドキュメンタリー映画にしようと、監督と助手が定期的にこの家を訪れるようになった。

例によって、初演の記憶はすっかり抜け落ちているアタシです。初演と同じキャスト、と云われてもそいう意味では全く感慨はないのだけれど、5年前にこのキャスト、しかも今となっては日本アカデミーの脚本家までキャストに居るという凄さに改めて驚くのです。

どうしてこの人々がこういう想いを抱くに至ったか、今彼らはどういう生活をしていて、子供の頃の名残りを残しつつも大人になって生きていて。自分が年齢を重ねれば親だって歳を取るわけで、そうなれば死ぬことだってあるし、そうなればずっと訊きたかったけれど訊けなくなることだってあるわけで。物語は多岐にわたって幾重にも重ねあわされているのだれど、物語の芯となるのは、ごくごくシンプルな、やはり、これは長女と父親の物語。あるいは子と親の物語。

そういう意味で公式動画で松永玲子が語っているとおり、序盤の30分、静かではあるけれど、これだけの時間をかけて子供の頃に起きていたこと、この家のこと、がすっかりカラダになじむのが気持ちいいのです。その後のタイトルもまたよくて。例によって何カ所かで使われるプロジェクションマッピング(初演の時はそんな言葉も知らなかった)ですが、もう、それぞれが格好良くて、あるいは慈愛すら感じさせる不思議な空気を作り出すのです。

みのすけはどこまでもゲスで居続けるヒールをしっかり背負います。長女を演じた犬山犬子の繊細な表情も台詞のそれぞれが愛おしくなってしまうのです。次女を演じた峯村リエを舞台で拝見するのはずいぶん久しぶりな気もしますが内に秘めた気持ち耐え、立ち続ける女の内側からの圧力の強さが圧巻。三女を演じた坂井真紀はチャーミングで、格好良く、しかも眼福(シーンとしてはかなり非道いけれど)までの盛りだくさん。三宅弘城が演じる書生のような人が年齢を重ねるのもまた哀しさ。女の子にうつつを抜かし続ける男を演じた大倉孝二のこういう軽さはあんまり見ない気がしてちょっと嬉しい。

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