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2013.07.13

【芝居】「ことほぎ」文月堂

2013.7.6 14:00 [CoRich]

文月堂の第10回公演。7日まで「劇」小劇場。120分。

元は下宿だった六畳一間ずつの古いアパート。芸人、役者、フリーライター、資格試験、漫画などそれぞれにまだ掴めない夢を抱いている。大家は寿司屋を営んでいるが、その娘が管理人をしている。管理人の兄は寿司屋を継ぐのが嫌で家を出たきり戻らない。
役者志望は自主制作映画への出演が決まったようで落ち着かない。バイトを辞め事務所のレッスンにもいかなくなった男を、彼女は心配しているが男はつれない。ライターは元商社マンだがアマゾンに生息する魚をつり上げる夢を持っている。漫画家志望のところには女優になりたいといって妹が転がり込む。
ある日、管理人の兄がいつの間にか結婚していた妻を連れて現れる。韓国人の妻の父親の容態が悪いので、焼肉店を次ぐために韓国に渡るのだという。

安アパートに住む夢を抱く人々、兄と妹のわだかまる気持ち、年老いた親のこと、あるいは離婚した妻や子供への想いや、鬱屈する恋人への断ち切れない想いをめいっぱい詰め込んださまざまな物語をアソート。人々の進む方向も速度もそれぞれ違うけれど、前に進む人々は、文月堂らしい作家の行き届いた優しい目線。

物語としては、夢を追う人、家族とのわだかまりやこだわり、あるいは恋心といったさまざまな小さな物語を並べている感じにはなっていて、語りとしては漫画家だったり、家族の話の比重もわりと大ききかったりと、群像という以上には全体としてどういう話なのか、今一つ感じづらいところがあるのは少々食い足りない感じがしないでもありません。

方言や外国語を交えるというのも、人々の違いを鮮明に見せるのに効果的。兄の、韓国人である妻を演じた中島美紀が喋る韓国語の台詞の量は圧巻で、それを字幕や翻訳なしに、イントネーションや語感だけで気持ちを伝えるというのはちょっとすごい。あるいは別れた妻を演じた三谷智子の大阪のオバちゃんキャラもまためいっぱいの力量。霧島ロックとの二人、分かれた夫婦が子供や再婚を巡っての会話のシーン、物語の中では少々色が異なる感はあるのだけれど、繊細で大人でちょっと好きなシーン。

言葉で違和感を作りつつも、食わず嫌いじゃなくてもう一歩進んでみよう、というのもまた、物語の前向きさ。象徴的に扱われている、「トマトの砂糖がけ」というのは、まあ昨今の糖度の高いやつじゃなくて酸っぱい奴で、と想像して意外にいけるじゃん、と感じるのが吉。物干し台のマドンナこと、下宿管理人を演じた鉄炮塚雅よは、少し気が強そうな造型で印象に残ります。

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