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2013.06.19

【芝居】「れんげでごはんのおばんざい」れんげでごはん

2013.6.15 20:00 [CoRich]

松本の市街地、蔵をリフォームした30人で満員の信濃ギャラリー、4回公演とはいえ早々に前売り完売。90分で7本立てという劇団初のオムニバス。16日まで。付近の飲食店とのコラボで、その店舗名と劇団ロゴのダブルネームなチロルチョコを配る、というお楽しみがまた楽しい。

先輩にサークル合宿と云われて連れて行かれたのは、宗教のような研修施設だった。不満を書いた日記を落として拾ったのは同じ建物にいる見知らぬ誰かだった。この教団を信じ切ってはいるけれど、気持ちはよく理解してくれる誰かと交換日記のようになっていく「真緑の音」
殺人事件が起きて探偵は警部に関係者を集めるように云われる。動機もトリックも見破ったと言い切る探偵だったが、それは覆され、困難に陥った探偵は再び関係者を集めて「茜色の推理」
恋人の居る男たちへのアドバイス。彼女ががっかりすること、別れ際、長電話の切り方、彼女のドタキャンへの対処。彼女がキュンとすること、寒い日、ドライブデートのこと「ラヴァーズ・トーク」
魚臭くない?「カタクチイワシのブルー」

ドジっ子な店員で人気のカフェ。仕事の不満をため込んだ二人の会社員がやってくる。大まじめにやっているのにやることなすこと間違いだらけの店員に癒されるというか、癒されないというか。「ドジっ子カフェは空色ストレンジャー」
資料を作るために早く出社した男、なぜか同じぐらいの時間でやってきた後輩は、朝活だとかなんとか云ってるけれど、送ったはずの見積もりは送られてなかったし、引き出しの中はお菓子で一杯だけど。「イエローサブ社員」
小さな郵便局、もうすぐ窓口を閉める時間。カードをなくした男が訪れたりはするがのんびりしている。そろそろ閉めるかという時間、仮面をつけた女二人が金を出せと押し入るが、その正体がわかってしまう。遠くにはサイレンの音が「とある郵便局の夕焼け」

ほぼ素舞台のわりに照明はけっこう吊りこんでたり、舞台奥の扉を演目によってきちんとふさいだり、と実はけっこう手間をかけています。ワンアイディア一発勝負だったり、短いながら積み重ねる物語だったり、まさに小皿がたくさんでてくるようなバラエティがうれしい。狭い小屋故だけれど、場所を知り尽くしているからできるとも思うのです。

「真緑〜」は、教団に幽閉される女と、その交換日記の相手の距離感がだんだん縮まりながらも、最後での脱出に至らない、ままならなさ。コミカルなシーンを挟んだりもしていますが、そのままならなさこそが作家の持ち味の一つ。ホリゾントを立てて設置し、壁全体も含めて緑色一色にするのが効果的。

「茜色〜」はまあ本格ミステリーではないだろうな、と思いながらも、謎解きがどんどんグダグダになっていく感じがおもしろい。探偵小説では古典的な氷を使って犯罪発生時刻を誤認させるというのを得意気に披露する探偵、死亡推定時刻から窓が割られた時間、しかもそれを自動的にという何にでもその氷で押し続けて解決しようとする無理押しがおもしろいし集められたのに関係者がみんなスッポかすというのもちょっといい。

「ラヴァーズ〜」は芝居というよりは、スチル写真をスライドショーのように流しつつ、音声を重ねるというビデオ上映。音楽もないし、YouTubeにもあげられる感じ(まあ、印象としちゃボラギノールのCMのアレですが)。彼女をがっかりさせないためには、というある種の面倒くささの前半も、彼女がキュンとする、というほんのちょっとの過剰感の後半も好きなのです。 ドライブデートで、事故りそうな瞬間に彼が片手で私をかばってくれた、とか、コンビニに買い物に行く彼が、車に一人残った私のためにリモコンでキーロックしてくれた、とか、東京の小劇場ではまずおめにかからないシチュエーションも地元な感じで実にいいのです。

「カタクチイワシ〜」アイキャッチな感じで何回か挟まります。頭に魚のかぶり物、魚臭いというのが、ポイントだったりするけれど、最後に片手にスプレー(消臭剤か)をもってうれしそうというのがちょっとメルヘンでちょっといい。

「ドジっ子〜」まあ、あからさまに女性がカフェ店員なパターンならどこかにありそうな営業形態、メイドカフェの派生な感じの物語の枠組みなのだけれど、それを少々むさ苦しい、若くもない男がやる、という男女逆転というワンアイディアの勝負がうまく働いています。客の女二人を派遣社員と設定して、不満と夢を語らせるというのも、一昔前なら男の役割ですから、ここもちゃんと逆転していて美しい。

「イエロー〜」 自由気ままでやりたい放題の後輩と巻き込まれる先輩、という感じ。正直に云えば、後輩がなぜそこまで自由を許されるのかというのが「茜色の推理」と同じ構造で、しかも役者も同じなのはもったいない気も。腹を立てた先輩が、激高するとぜんぜん別のところに腹を立てていくというズレが造型がおもしろい。

「とある郵便局〜」 銀行強盗なんだけれど、舞踏会かという仮面をつけた女ふたり、という場違い感も、金をつめさせるバックを投げるとブランド物だから持ち主が怒ったりという、ふざけてるんだか本気なんだかわからない感じの序盤。正体がわかって、なんか素敵な友情物語という終幕がちょっと可愛らしく、優しい視線。

短い時間の芝居なので、それぞれの役者がそれぞれわりと強い印象のキャラクタで作るという感じになります。結果として役者の顔見世にもなっています。少々キャラクタが似てしまうものが出てきたりもするけれど、それもご愛敬。 加藤吉は愛らしさ、抜けてる感じの造型がさすがに巧い。 制作チーフでもある遠藤優はいやいや、相当に間も会話もきっちり。馬渡理子と小澤鮎美は去年の本公演 (1, 2)の二人、ペアで喋っている時の実に安定した感じが醸されているなぁと思うのです。どこか抜けてるかんじ、どこかきちっとしてる感じがどちらにもあって。 市川しをりはなんせスライドの表情が実に素敵で可愛らしい。 小口翔はアイドルヲタの造型が、まあ、体格もあるけれど、そのこだわりっぷりが現実の物に見えてしまう説得力。 宣伝美術を兼ねる渡辺千晴はマダムから魚まで、どうかと思うふれ幅なれど、豊かな表情が持ち味。

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