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2013.06.13

【芝居】「帰還」燐光群

2013.6.8 14:00 [CoRich]

二年前に民藝向けに書き下ろされたダムに沈む村を巡る物語を、自劇団で上演する130分。9日までスズナリ。そのあと名古屋と伊丹。

療養施設に入居している父親を訪ねる息子。自身も先が短いことを知り、久々に訪れた。若い女性を紹介し、絵を教えて欲しいという。父親は絵描きで、家族を放り出してあちこちを転々としていた。
そのときテレビに映ったダムに沈む村で立ち退きに応じない最後の一軒となった家の女性を見た父親は、突然その村を訪れると言い出す。かつてこの村に住んでいたことがあるのだ。

川辺川ダムを思わせる設え、ダムの問題という物語で大枠を作りつつも、(いわゆる)戦後の地方で農業を教え、自立を促し自覚させるといういわゆる共産党的な活動といった時代を背骨に、その潜伏において一緒に暮らしていた男女を幹として描きます。正直にいえば、一緒に暮らしている男女の描き方にしても革命とか理想社会という言葉が踊る過去の描き方にしても、リアルに時代とともに走った作家ゆえか、それより若い世代たとえば45歳のアタシから見ても少々センチメンタルに過ぎるというか、時代を感じぜずには居られない物語だとおもうのです。(それは当日パンフで作家の挨拶として、転位21時代の仲間の共演、という言葉にも感じるのですが)

未見の初演では大滝秀次が主人公となる絵描きを演じたので、役者の年齢や圧倒的な説得力がこのセンチメンタルを地に足のついたものにしていたのだろうと思います。今作の藤井びんはまた別の飄々とした造型が印象的ではあるのだけれど、この時代を背負う説得力という点では年齢も含め少々心許ない感じは否めません。いくらダムの問題を扱い、(少々唐突に)ヘリコプターを飛ばして現在のわたしたちの問題にリンクさせようとも、それをリアルとして感じられないワタシには少々物足りなく思うのです。

おそらくは燐光群で初めてのヒロインを演じた松岡洋子は(若くはなくても)美しくて力強い、というヒロイン像に説得力があります。雨戸の裏に彫られた母親と、その前に同じポーズで座る娘というシーンが実に美しくて。

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