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2013.06.26

【芝居】「マリオン」青組

2013.6.22 18:00 [CoRich]

現実に存在したゾウガメ・マリオンの物語を骨格にしつつ、「独りで生き続ける」ことを女性視点で描く90分。23日までアゴラ劇場。

リアカーで一夜を伴にする男女。今は独りの女は自分の家族たちの昔話を始める。リアカーで移動する一座。父・兄・姉・妹・犬。生きている客は少なくなってるけれど、その一座の人気演目は、ゾウガメの話。島、バアバに育てられたお嬢ちゃん亀は幸せにごゆるりと暮らしている。船乗りたちにとって貴重な蛋白質で乱獲にあっていたゾウガメだが、ペットとして、軍のマスコットとして長い年月を生き続けている。

舞台下手奥には内側から光りケーブルが張られた塔、その下はウッドデッキと砂浜を思わせる砂。中央にリアカー。上手手前には小さな塔。リアカーに旅回りの一座といえば「寿歌」ですし、そうなると塔は原発かと思ってしまうのです。もっとも、物語としてはほとんど関係がなくて、「独りで生き続ける」ということの作家の見え方という物語。

そろそろ若くはない、という年齢にさしかかる作家(そうか青山円形劇場の「転校生」から20年も経つか)、彼女がこの物語を描くに至った何かがあったのかどうかは知る由もないのですが、いままでは恋だったり、誰かと夜を伴にすることだったりを描いてきた印象の強い作家が、「独りでいることになるかもしれないという恐怖」を描いてきたのは新鮮な驚きなのです。

物語の骨格となるのは、時代が移り変わっても生き続け、「さいごの独り」になってしまった実在したゾウガメ・マリオンの物語。大西玲子が、一座の家族のなかで、あるいは地球の人間の最後の一人となってしまったという女性を演じることで、人間とカメとが重なり合うように描かれるのです。お嬢ちゃんから大人、年寄りに至るまできっちり。荒井志郎は一夜を伴にする男からどもりがちの兄かと思えば後家という役があったりとダイナミックレンジの広さが魅力。姉や老いたカメを演じた福寿奈央は可愛らしく、しっかりとした眼差しが印象に残ります。父を演じた藤川修二は意外に珍しい気もするがさつが先に立つ父親の造型。急なキャスト変更で犬、を演じた松本ゆい、従順さ、というのが似合うような可愛らしさにほわんと嬉しくなるのです。

当初の予定では劇団員だけのミニマルな公演だったのだけれど、急病によるキャスト交代によってそれは叶わなくなってしまいました。小さくてどこにでも持って行けるような物語を劇団員だけで、というのは、再び上演する機会がありそうな気がします。ワゴンにでも乗って、旅公演、なんてのが目に浮かぶような浮かばないような。

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