【芝居】「プツリ」第6ボタン
2013.6.15 13:30 [CoRich]
おなじみの十条の飲食店で続ける公演。リーディング、と銘打ち、ごく少ない4人のミニマルな構成の55分。16日まで。チケット代にはワンドリンク・ワンフード(昼ご飯になるぐらいにはもりだくさん)込みで2000円。
せっかくのデート、ちょっと頑張っておしゃれしてきたのに、恋人は30分遅刻してきても謝りもしない。優しいしちゃんとしてるし、仕事頑張ってるのはわかるけれど、そこが許せない女。
職場の飲み会の徹夜明けで大急ぎで寝癖を直してやってきたのに恋人はなぜか機嫌が悪い、どうしたらいいんだと考える男。
女にかかってきた電話は元の恋人からだった。元々嫌いになったわけじゃないけれど別れた恋人と話をすれば、どこまでも優しくて美術館へデートに誘ってくれたり、完璧だ。
男は職場の飲み会で終電を逃したあとにタクシー乗り場で偶然居合わせた居酒屋バイトの女子大生をおくることになる。気楽な感じ相談を聞いてあげるだけで明るく、喜んでくれる。
リーディング、と銘打ちながらもそれにはさまざまな形態があります。今作は手にしたノートを読むのは内面の吐露、それ以外の会話は普通に行うというルールがうまく機能しています。
恋人たち二人を物語の核に、つきあってそこそこ時間は経っているけれど、満たされない承認願望だったり、束縛を面倒と思うことだったりの男女。すれ違うことはごくわずかなことで大筋ではきっといいカップルなのだろうな、きっとこの二人は結婚に至るのだろうなという雰囲気なのだけれど、場面場面で切り取れば怒りたくなったり泣きたくなったりというさまざま。それはもちろん結婚したって続くだろう日々のこと。そこに魔が差したというか、きっかけというか。元彼だったり若い女だったり。浮気しようとおもえばできるかもしえない、そういう気持ちの揺れを物語の核に据えます。じっさいのところ、会って話をするとか、長電話するとか、それぐらいのことだけれど。
惹かれる気持ちがあっても、たとえば元彼とのデートはドタキャンされて、ああ恋人ではなかったんだと我に返ったりするという距離感の伸び縮みの細やかさが印象的。終盤で、恋人は再び職場の飲み会で朝までばたばたしていて、二日酔いだけれど、頑張って会いに来るのが恋人なのだ、ということとのコントラストがいいのです。演出では、電話がかかってくる相手を、フェイクに入れ替えたりするような見せ方もクスリとする感じでアタシは好きなのです。
派手さはないけれど、日常の何かをきちんと描き出す解像度の高さ。細やかな気持ちを小さい劇場だから伝わる繊細さで描くこと。短い時間だけれど、ぎゅっと濃縮されて、しかも登場人物がちゃんと成長しているというのが物語になっていて、いい一本なのです。
今カレを演じた日置達哉の面倒くささをあからさまにする軽口と、それでも想っているのだという造型。彼女を演じた青木裕美子は、不満をあからさまにする表情と癒され安堵する表情と、あるいは少しの諦めと、未来へ向かう表情が実にいいなあと思うのです。女子大生を演じた我妻教子のよく喋る感じ、頼ってくる年下女子の造型がまた(今のアタシにとっては)ファンタジーのよう。元カレを演じた小保方こうたは、真面目さ、優しさを徹底した雰囲気が印象に残るのです。
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