【芝居】「ナミヤ雑貨店の奇蹟」キャラメルボックス
2013.5.19 14:00 [CoRich]
6月2日までサンシャイン劇場。キャラメルボックスとしては長めの135分。
人から金を奪って逃げてきた三人組、潰れた雑貨屋で朝まで隠れることにする。閉まったままのシャッターの向こう側の郵便口に入ってくる手紙。ミュージシャンになりたいけれど病に倒れた父親の後を継ぐべきかどうか悩みを書いた手紙がくる。この店はかつての店主が始めた「悩み相談」で有名な店だった。シャッターの郵便口に入った悩み相談の手紙に店主は大まじめに返事を書いて翌日にまでには牛乳箱に返事を返している。
1980年頃と2013の間を行き来して進める物語。舞台の上にはシャッターの開かない雑貨店のセット。 小さな箱が真ん中にあって、それを回転させながら店の表と裏側を切り替えるのです。 タイムスリップというよりは時間を超えた不思議な特異点で繋がるたった一日の物語。
序盤では2013年の「コソ泥」の三人組と、1980の店の様子を描いていきます。物語が多岐にわたり、バラバラのピースを放り出します。じっさいのところ、序盤は決して見やすい物語ではない気がします。それでも終幕近くにするすると纏めあがっていく、というのは観ていて楽しい。
悩み相談をする、ということは自分の中ではあるていど整理がついて、どうしようかと決めていることで、相談を受ける人はそれの後押しだというのは確かにそのとおり。
養護施設、ミュージシャン、親のあとを継ぐこと、夢が潰えること。不倫に悩むOL。 或いは先の長くない親のこと、最後に望んだことを実現した、という瞬間に起こる奇跡というファンタジーなのです。
後半にさしかかり、若い別のOLのあたりから物語は俄然盛り上がります。昼はOL夜はホステスで働く彼女は、OLを続けるか、もっと稼げてしまうホステスを続けるかということを相談します。どうしたらいいか、ということを授けるあたりで、あれよあれよ、という感じが実に楽しい。時代背景ゆえの荒技だしいわゆるSFの原則としちゃ、少々掟破りでありますが、この上り調子の感じがじつによくて。 その中に施設の子供たちの話が静かに寄り添って、人々の背景が見えてくるのです。
キャピキャピなOLからキャリアウーマンまでの鮮やかなグラデーションをつくる岡田さつきが圧巻で物語を面白くします。前田綾がどちらかというと影のある役というのは珍しい感じ。 若者を演じた多田直人、渡邊安理、筒井俊作の三人の軽い感じも好き。 二つの別の時間が繋がる、というたった一夜の物語、そうさせたのはこの店の店主の誠実さゆえ。演じた西川浩幸の圧巻の説得力。
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