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2013.05.04

【芝居】「河童~はたらく女の人編」渡辺源四郎商店

2013.5.4 15:00 [CoRich]

 5日まで。

青森の商事会社営業部。ある日、OLの一人が朝起きたら河童になっていたが、それでも出社してきた。しゃべることも考え方も前のままだが、生臭かったり手に水掻きがあったりぬるぬるしていたり。部長はそれでも受け入れよういい、もり立てようとする。素直に従う者もいるが、受け入れがたい者もいる。 元々は高校生向けに書き下ろされ、いじめと差別の構造を描いた一本。ほぼそのまま会社の中の物語として描かれています。人種だったりという固定化された中での差別というよりは、感染るかもしれないという病気だったり、さらには、ほぼ同質な人々の中で些細な違いがイジメとなり、それはなにがきっかけで自分にふりかかるかわからないし、差別する側に居た人が突然差別される側になるかもしれない、ということを淡々と描くのです。

実際、描かれていることはシンプルだけれど深刻なこと。作家はそれを淡々と「ありそうなこと」「起こっていること」として描くばかりで、何かの教訓だとか、こうあるべきだという示唆だとか、あるいは幸せな解決策を描くということをしません。正直、エンタテインメントとしての芝居という意味ではあまり巧い感じではないのだけれと、安易に解決とかカタルシスとか教訓に一足跳びに着地しないのは、現役の高校教師でもある作家が、万能な解決策をいまだ見いだすことができないのに物語のなかだけで解決するわけにはいかない、という誠実さで、それは彼自身の切実な気持ちだろうとも思うのです。そういう意味で、この戯曲を演じた別の高校に対して、どこかの高校演劇の講評でみかけた「何かの解決や希望を見せないのは評価できない」というのはお題目としては正しいかもしれないけれど、誠実ではないか、あるいはファンタジーにすぎるのではないかと思ったりもするのです。もちろん、本当の現場を知らない私ですし、ちゃんと解決できる現場だってあるのかもしれないのだけれど。

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