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2013.05.07

【芝居】「おるがん選集 3」風琴工房

2013.5.4 19:00 [CoRich]

劇作家・詩森ろばが好きな短編小説を選び芝居として書き直して上演する企画の三回目。 (1, 2) 80分。6日まで、高円寺・ひらや。立派なキッチンもあるようで、回限定で、カフェごはん付き公演も設定されています。

雛型という人間の形をしたものを拾ってきた女。恋人が居るのに、男の形をした雛型との同居をやめることはできない。そのうち、雛型は外にでて稼いだりと逞しくなってきて。「物語が、始まる」(原作・川上弘美)
父親が亡くなり久し振りに戻ってきた息子。父親は妻を亡くしたあと、何人もの御あと暮らしているが、隣町の床屋で働く若い女と同居するようになり、しばらく暮らしていた。男はこの家を出て東京に行ったが、女はこの家でずっと暮らしていた。父親の悪い癖が再発して、女は少しずつ壊れていって「痩せた背中」

「物語、〜」は、もう存分に川上弘美節。不思議な何かと女の情念とが不思議な混じり合いの手触りの物語に素直に入っていけるかどうかがおもしろいと思えるかどうかのポイントだと思います。読み手が速度を決め、行きつ戻りつして味わえる小説に比べると芝居というやりかたはどうしても不利になってしまいそうな物語、という気がします。川上弘美を芝居で観ることが大好きなアタシなので、なんの違和感もなく、もうワクワクと楽しいわけですが、それが誰でも同じというわけでもない気はします。

恋人が居るのに、浮気心というのとも違ってふらふらと拾ってしまった「雛型」。それが成長し、男となり、恋心のようなものまで生まれてしまう女。それに嫌な予感を感じながらも許してしまった恋人の影はどんどん薄くなっていくのです。雛型をペットのように幼いものがどんどん成長し自分を追い越して、そして先に居なくなってしまう、という設定が絶妙で、それを経た女は男を育て介護し看取ったという、ある種の人生を一度経験したのに、まだ彼女自身は若いままということ。「拾って」しまうほどのある種幼かった女がひとまわりして、おそらく年上の男に追い付いたという感じが、新たな「物語の始まり」を想像させるのです。

田中沙織の物静かでいて、しかし内に秘めたる「女」の色っぽさ、人妻(1)だというのににやられる友人多数、もちろん私も例外ではありません。透き通る声がまた実に素敵なのです。 雛型を演じた佐野功は、どこか無機質を感じさせる顔のつくりと、すらりとスマートで人ではない何かを説得力。

「痩せた〜」は初演を観てるにもかかわらず、例によって記憶力がザルのアタシです。 正直に言うと、初演の時よりも私には物語がぴんとこないというか難しいというか。行きつ戻りつする時間軸はともかく、狂っていく女と、男と東京での恋人など描かれていることが実感に近づかないというか。まあ、私が他人の暮らしたことがない(泣)、という欠損ゆえかとも思うのですが、初演のときはもうちょっと身近に感じてたような、感想書いてるし。感想読み直して思い出す、そうだ、これ、西原理恵子だ(多分間違った解釈ともおもうけれど)。

帰ってくる男を演じた酒巻誉洋は、派手なことはなくてそこに居た子供が戻ってきた、という時間軸もしっかりとした説得力。後妻を演じた李千鶴は可愛らしく、情の厚さが滲むよう。恋人を演じた宍戸香那恵は男を信じ続けて、東京で待っている女、という役なのだけれど、そのひたむきな感じが実にいいのです。両方に出演の根津茂尚は限られた舞台のなかで欠けてしまいがちな、「この場所」の外側に広がる社会を感じさせるのです。もちろん私たち(=普通の)の視座をしっかりと作った説得力。

劇場でない上演場所を見つけるのも、この主宰の確かな眼力で、どこに行っても新鮮で入ったことのない場所、というロケハン力の凄さ。この狭い家の中で二カ所を舞台にする、というのも相当に無茶だけれど、間の休憩を挟んでみんなで頑張るというほほえましい感じも実にいい空間なのです。

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