【芝居】「おのれナポレオン」東京芸術劇場
2013.4.27 19:00 [CoRich]
三谷幸喜の作演、野田秀樹の主演という話題の顔合わせ。5月12日まで東京芸術劇場プレイハウス。5月9日には全国の映画館と公共劇場を結んだライブビューイング(上演の生中継)が設定されています。145分。
ナポレオンの死語20年、死因に疑問を持った男が当時の関係者を訪ねてまわる。ヒ素が検出され、暗殺が疑われるようになったのだ。ナポレオンに死の直前まで仕えたシャルル。モントロン、その元妻でナポレオンの愛人となったアルヴィーヌ、死因所見を行ったセントヘレナ島の町医者・アントンマルキ、事実上の軟禁を行い、ナポレオンの勝手に手を焼いたにもかかわらず、死後に評価どころか罵倒された提督・ハドソン・ロウ。付き人のマルシャン。
セントヘレナでの幽閉と、今なお真相が闇に包まれたままのナポレオンの死因に端を発し、史実の隙間を想像力で描きます。序盤は死因に疑問を持った医学生があった人々への聞き取りという体裁で、静かにそれぞれの人物がナポレオンについて語った場面(見え方としては一人語りの)として始まります。主な登場人物をそろえたところで時間がぐっと戻り、出オチ感めいっぱいでナポレオンが登場します。この気まぐれな英雄にどれだけこの人々が翻弄され、時に恨み、それぞれが強烈に「おのれ」と思っているかを執拗に描きます。相関図をしっかりと描く前半の仕込みがどれだけすごいかというのは、全体を見終わった後にこそ感じるのです。
ネタバレかも
この枠組みの中で始まる後半。胃ガンとされる死因ではなく、フランスに戻すために掘り返された遺体が腐っていなかったとか(wikipediaにも書いてあったりする)、砒素が検出されたとかを切り口にして、犯人は誰なのか、どうやって殺されたのかというミステリーの語り口で進みますが、さすがに三谷幸喜、犯人を仕立てて単なるミステリーでは終わらせません。ナポレオンという「偉大な」人に関わってしまった人々の悲喜劇という様相すら呈してくるのが実に見事なのです。
種明かしがされても作家は容赦なく物語を進めます。この医学生の死因への疑問なんていう序盤の枠組みをすっかり忘れていたけれど、そこにすらまた物語は踏み込んでいくのです。 身長が低い印象が強いナポレオンを野田秀樹に、という(他がわりと背の高い)配役が絶妙で、時に強気に、時に狂気が混じるダイナミックレンジのすごさが圧巻。三谷演出とはいえ、どちらかというと野田秀樹という役者が勝る印象というか、NODA MAPならコネタのオイしいシーンだけを繋いだという感じすらします。が、終盤で見せる表情は恐ろしさすらあるのです。
晩年仕えた家臣を演じた山本耕史は時に軽く、時に尊大をきっちり。その元妻で今は酒場を切り盛りするという女を演じた天海祐希は実に美しくて時にコミカルで。正直に云えば、あまりに気高い感じすらあるのは酒場の女としての説得力を試されている感もあるのです。 内野聖陽は、年齢の振り幅を熱演。松本幸四郎みたいになってしまうのが痛し痒し。
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