【芝居】「つちのこ」青年座
2013.3.30 14:00 [CoRich]
太田善也の2010年初演作の再演。アタシは初見です。休憩15分を挟み150分。3月30日まで亀戸文化センター・カメリアホール。4月上旬に北海道各地の公演があります。
岐阜の山奥の旅館。東京の大学を卒業して戻ってきて役場に勤める長男は3年越しの恋人に結婚を申し込む。母親が営む旅館に客が訪れることはまれになっていて、この村はゆるやかに過疎が進んでいる中、寺の住職は観光を目玉にして活性化を図ろうと考えている。
ある日、長男と親友二人は、町からの不法投棄を見張るためのパトロールで捨てられたタンスの中から金の延べ棒を見つけ、三人で山分けすることに決めたとき、東京から若い女性が旅館にやってくる。それは長男の大学時代のサークルの友人だった。
太田善也にとっては手慣れた感のあるややコメディ仕立てのウエルメイドを青年座の役者たちというマッチングの良さ。 田舎で生きていることの不満というか物足りなさ、ひとときを過ごした東京という刺激的な場所を忘れられない男。延べ棒という大きなチャンス、そこから友人すらも裏切れとそそのかす若い女は、創世記の蛇にも見えて、つちのこ、というタイトルが巧い具合にはまります。迷う男の姿をことさらに責めるではなく、東京からの女の側をきっぱりと切り離そうという母親というくだりが実にいいのです。
この地方と東京の間で揺れ動く男の物語を中心に据え、その外側に、金の延べ棒を隠し通そうという3人と村おこしをしようという人々のどたばたを描きながら進む物語。老人が口癖のようにいう「身の丈にあった」生き方を越えようともがく姿の悲喜劇。
東京からの女を演じた小林さやかは、キュートでしかも魔性という説得力。物語は人を信じられなくなったという造型でこのキャラクタに奥行きを与えています。母親を演じた増子倭文江は、のんびりしているようでいて子供や人々に目を配りつつ、家族をしっかりと守るかっこよさに痺れます。祖父を演じた名取幸政は、少々卑怯な造型ではあるけれど、「身の丈にあった」ということを繰り言のように云うという物語の根幹を支える説得力の風情が好き。長男を演じた石母田史朗の「まだ何者にもなれない感焦り」が実にいい感じ。親友二人を演じた山崎秀樹・高松潤とも、どこか中二っぽさな成長しきれない感じがじつに愛らしい。
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