« 【芝居】「淡仙女」あやめ十八番 | トップページ | 【芝居】「クリエイタアズ☆ハイ」ホチキス »

2013.04.22

【芝居】「女教師と団地妻」ボクキエダモノ

2013.4.21 15:00

ロマンポルノかと思わせるタイトルが目を引く70分。21日までギャラリールデコ4。

築30年になる団地。婦人会の人々は規律を重んじる会長の強い指導力のもと、強力なコミュニティが作られていた。この団地に引っ越して間もない私立学校の女教師は入院する家族の看病のためだという。ある日、集会所で婦人会の集まりのあと、歓迎会を兼ねて小さな宴会が開かれる。夫への愛情が溢れている新婚に対して、長い結婚生活でどこか陰のあるナンバー2の目に怪しい光が宿り、酔いつぶれた新婚を自分の部屋に招き入れる。

色気違いやレイプ、さらには脅されて主婦売春という話題は出てくるし、コミュニティの崩壊どころか墜ちていく主婦たちの姿を派手に見せながらも、物語の根幹は、金の工面に困った女教師の裏の顔と、優しかった教師への依存へと墜ちるニートの姿、という実はなかなかにハードなつくり。もっとも、日活ロマンポルノだって、濡れ場以外を取り出せばこんな感じともいえるわけで、逆にいえばこの物語の作りで、後は女教師の濡れ場さえ用意すれば(笑)十分にそういう映画の脚本になりそうな雰囲気があります。

序盤は、規律という名の同調圧力が強い婦人会の主婦たち。そこに美しい女教師と、その教え子で今はゴミ捨て場の掃除などを進んで行うニートとなった女を配して物語は始まります。その同調圧力の気持ち悪さというより怖さを見せるけれど、物語は中盤であらぬ方向へ転びます。

ネタバレかも

新婚妻ののろけを冷ややかにみる冷め切っただろう夫婦関係やセックスレス、その妬みなのか怪しい企みに墜ちる新婚妻で強固に見えたコミュニティが崩壊し、一軒家を買う足しにする貯金はあるのだという新婚の妻から金を横取りしようと考えてなりすましの脅迫メールを送るという女教師。アタシが観た回はスマホらしくbump(bluetoothでアドレス交換するアプリ)やら、ふるふる(LINEのアドレス交換)の仕草にメールを打るように作られています。友人が観た初日時点では画面を撮るだけで何がおきたかわからなかったといいます。進化するのはいいことだけれど、(初日に来る観客に対しては)ちょっと惜しい。

時折挟まれる、女教師と妹のシーン。養育施設に居る妹は早く社会に出たいと考えているが、手っ取り早くと思ったか、姉を取られると思ったか姉の恋人を寝取り、妊娠、しかし不倫を知り絶望に至って焼身自殺を図るというシーンに至り、この部分全体が団地のシーンより前の出来事で、まさにこれが女教師が「墜ちた」原因なのだとあかされる終盤、そこからその妹が消えれば女教師が喜び、自分が愛された妹に取って代われると考えるニート女の展開が見事。 これに限らず、主婦たちのメッキが徐々にはがされて裏側が透けるようになっていく描き方は巧いなと思うのです。

美しく可憐に見えるけれど、その裏の顔が後半に向けて露わになる女教師を演じた外山弥生は(薄幸と言い過ぎてるアタシですが)不幸というよりは、その厳しい状況の中で懸命に生きる悲劇という造形の奥行き。妹を演じた志水衿子は奔放で不安定という思春期特有の壊れそうな感じを見事に。ニート女を演じた赤星雨は卑屈にキャラクタを作るけれど、それゆえに安心がほしいというキャラクタが終盤に説得力。新婚妻を演じた千賀亜希子はラブラブいっぱいな序盤をイタくなるぎりぎりで抑えながらも、中盤で閉じこもる感じ、そこから度胸を決めて主婦売春を堂々とというダイナミックレンジが見事。

|

« 【芝居】「淡仙女」あやめ十八番 | トップページ | 【芝居】「クリエイタアズ☆ハイ」ホチキス »

演劇・芝居」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【芝居】「女教師と団地妻」ボクキエダモノ:

« 【芝居】「淡仙女」あやめ十八番 | トップページ | 【芝居】「クリエイタアズ☆ハイ」ホチキス »