2013.4.13 14:00
[CoRich]
アタシは初見です。100分。14日までSTスポット。
この場所にずっと居る。あたしが主人公の物語のはずなのだけれど、たくさんの人が入れ替わり立ち替わりやっってきて、あたしが居る場所なのに、好き勝手にやっていく。ここにずっと居てはいけないということはわかっているのだけれど。
全体に白やページュのモノトーンに衣装や舞台に少しの差し色。25歳だという作家と演出家の描く物語は、社会になじめないけれど、外には出て行かなきゃいけないという焦り。引きこもりの話を描くにしても、男だとその恥ずかしさが前面に出る感じなのだけれど、女性が女性を主人公にして描くと、コミュニケーションを取りたい(あるいは取らなければいけない)というところがスタートになる印象なのは新鮮。
現実なのか夢のようなものなのかはよくわからないけれど、閉じた世界の筈なのに、あれこれ入ってくる人々に焦らされる主人公。友達のような、そうでもないような、さまざまな人々。当日パンフには核となる何人かと、ほぼネタとして一瞬現れるだけのキャラクタに至るまで100近いプロファイルがタグクラウドよろしく大量に並んでいて(この当日パンフの見せ方は巧いと思う)、その通り過ぎる人々を横目で、少々苦々しく思って傍観している主人公、という感じでしょうか。
(ガンダムやらエヴァやらの)パイロットという仕事だけに打ち込んできただけという女が友達の弟(しかも彼女が居る)に一目惚れしてメロメロに溶けていくシーンが好きです。あるいはライトノベル作家の女二人の恋愛感覚直前の距離感の危うさというシーンもちょっと似た感じ。このエピソードにわりと多くの時間が割かれていて、物語のというよりはそれをおそらくは実感として感じられる若い女性の作演が作り出した「そういう雰囲気」ということにパワーがある感じがします。この部分の物語で描かれる気持ちの(どこにでもありそうな)普遍性はもちろんあるのだけれど、そのどこにでもありそうな話を舞台に乗せてなお瑞々しく作り出せるのは、地味ではあっても、若い彼らの身の丈で自身に向き合って紡いでいるからだと思うのです。それはもしかしたら今、この瞬間しか作れないものなのかもしれません。
あるいは主人公を名乗る女、引きこもっていて鬱々する感じもアタシの気持ちをつかんで離しません。彼女たちの年齢の倍近い頃になって考えるアタシもどうかしているけれど、ずっとここでくすぶるのか、休みは終わりだよ、と告げられるあたりがなんか実に今のアタシの気持ちに寄り添ってくれるようなのです。
正直に言うと、エンタテインメントを意識しているというよりは、作家のだらだらと思索したり思ったことに付き添ってあるいているような感覚で、それを退屈だと感じてしまう向きもあるかもしれません。パッチワークのような断片を反復して見せるという体裁も、流行ではあるかもしれないけれど、どうにも好きになれない、という感覚はアタシ自身がよく持つ感覚。それでも、今作がほんとうにほんとうに愛おしくてならない感じなのは、テクニックとか手法とかのためにするのではなく、語りたい感覚がしっかりと作家にも演出家にもあると感じられるからなのです。
引きこもっている女・主人公を演じた土井玲奈、鬱々と拗ねたような感じなのも、終幕で前向きに歩きだそうという美しい笑顔も、地道にしかし実に印象的なのです。戦闘機のパイロットで恋に溶ける女を演じた荒弓倫の静かで安心しきった表情にキュンとします。片腕がサイボーグだという無茶ぶりな女を演じた竹川絵美夏のすばしっこい感じ、一升瓶をかかえてたり萌えヲタだったりを存分に作り上げた多賀麻美も、たった一人の男性だけれど、どこか中性的な印象を残す大柿友哉もいい印象なのです。
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