【芝居】「連続おともだち事件」クロムモリブデン
2013.3.16 14:00 [CoRich]
クロムモリブデンの新作。20日までRED/THEATERのあと、大阪。110分。
男はレンタルフレンドのお試しだといって近づいてくる。断る男に友達いないだろうと云って、Twitterに自殺予告を投稿させる。それを読んで次々と人が。刑事を名乗る男、屋上から飛び降りる生徒を必死で止める校長先生、死にたい男、死なせたい女。レンタルフレンドはまるでネズミ講のよう、その被害者は対抗するために組織を作っている。そんなさまざまが起こる屋上に迫るのは。
友達のことと自殺、という中盤までの物語の骨格。それが巻き起こす波紋。それが起こると大変な目にあう学校や教えるの現場は今の感じ。あるいは金を払って友達を買うという一種の風俗やネズミ講的な怪しさ(間違ったことをしているという自覚はある)。 あるいは、そこに挟まって、昔は友達だったけれどフェードアウトした関係が、もう一度出会ってしまう気まずさも。これもまた「ともだち」のありかた。
船の甲板を縦に割ったような舞台、飛び上がるように登場し、消えていくポップで躍動する感じ。役者の負荷は相当だろうと思いますが、その中でハイヒールという幸田尚子がちょっとすごい。男の話を聞くのは「補完する関係」と拒絶する可愛らしさとクールビューティを地でいく美しさのダイナミックレンジ。クールビューティという意味ではちょっと似た感じのキャラではあるのだけれど、葛木英はもうすこしヤンキーっぽさが入るのが新鮮。ゆにばは全作から比べると格段に女の子でびっくりするのです。森下亮の人形っぽさ・悪巧み、あるいは友達・友達じゃないスイッチの落差。釣るための女を演じた渡邊とかげは、可愛らしさが全開という説得力。店長を演じた金沢涼恵は女将っぽさの貫禄も珍しい感じ。校長を演じた久保貫太郎は終幕にいたり笑顔だけれど、すべてを一身に背負うよう。
ネタバレ。
終幕、海から迫ってくるもの。決してよくなかった屋上だけれど、逃げる場所、というのはつまり(震災に伴う)津波のこと。みんなが白い服、羽根(が、片方だけ)。一人だけ白い服ではない校長(ほかはみな手を繋いでいるのに、彼一人はそうしていないというのも巧い)がそれを想う、という鎮魂の場面と読みました。物語全体のつながりとしては唐突だけれど、屋上、という一点を繋いでくるりと変化するというのはクロムらしいといえばらしい。「学校の屋上」の芝居と云えば鴻上尚史「トランス」 (1, 2, https://kawahira.cocolog-nifty.com/fringe/2010/09/retransmu-c572.html)だけど、「学校の屋上」という新しい一つのものがたり。 もっとも、意味あいは全く違っていて、いろいろあった日常が突然なくなってしまう、という納め方、怖くもあって。 あるいは時折挟まる、ジョーズっぽい音楽とダンス。それは不穏さの前兆。観ている最中には意味がわからないのだけれど、あとからじわじわ来るのです。
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