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2013.03.11

【芝居】「今、出来る、精一杯。」月刊「根本宗子」

2013.3.9 14:00 [CoRich]

短編上演を繰り返してきて、気がつけば本公演は昨年五月以来。がっつり濃密な135分。 12日まで、駅前劇場。

スーパーの事務室。傍若無人な振る舞いをするアルバイトの女は同僚の若い女を泣かせたりする。店長は泣いている女の恋人だが泣かせた女の元恋人でもあって強く注意することができない。それを苦々しく不潔だと思う女のアルバイト、誰にでも優しいバイトリーダー、軽い感じでモテる男、その恋人、それに想いを寄せる男は、中学の頃に友達を怪我させてからずっと口数が少ない。店には今日も、車いすでやってきて弁当を寄越せという女がやってくる。
バイトも長く続かない男はずっと家にいて、彼女に借りた金で生活している。彼女はどこまでも優しくて、愚痴でもなんでも聞いてくれていて。

依存する人々、働けない男はそれを優しく包み込む女に支えられ、依存していて。あるいは元の恋人のセックスに依存していて傍若無人になったり。拘りどころがバラバラな人々、それでも生きていかねばならないという人々。

たとえば、アパートに住む男。ほぼニートで文句を言っては働かないし、女の稼ぎで暮らしているどころか、弱い自分をひたすらに受け入れ慰めて貰っているし、女は惚れた弱みかどこまでも優しく包み込むように支えているというバランス。 たとえば、傍若無人に振る舞う女にいじめられている恋人を助けることすらできない店長。たとえば、惚れた腫れたなカップルの女にほのかな恋心を抱く気弱な男。それ以外だって、潔癖だったり、八方美人だったり、人との距離がヘンだったり、毎日店に言いがかりをつけに来たりと、部分部分はどこかにいそうな感じではあっても、デフォルメされ、あそことここがリンクして、という具合にがんじがらめに編み上げる世界は、さながら動物園のよう。

ネタバレかも。

ニート男と女のバランスは、女が友人の葬式から帰宅したところで脆くも崩れます。静かに悲しさに沈む女を前に、一言の優しい言葉も抱きしめることもできないどころか、アルバイトでの愚痴をどうして聞いて、いつものように慰めてくれないのかと逆上してしまえば、これまでこの危ういバランスを一人で支えてきた女の張り詰めていた気持ちが崩れてしまうのです。もっとも、これで終わり、とならない「抜け切れない」ズブズブな描き方は、作家が人間を優しくみてるのか、底意地悪くみてるのか、ちょっと怖い気持ちになったりもするのです。支える女を演じた早織は凛と美しく、静かな語り口も、怒鳴るテンションも、自在に。しかし、この美人にここまで想われる人生、あるところにはあるんだろうか(泣)。

傍若無人な女を演じた梨木智香は圧巻の存在感。もっとも、元カレの店長の手業の虜になっていて、別れられているのに離れることが出来ないという依存なのだけれど、なぜ店長が新しい恋人が居るにもかかわらず、その傍若無人に付き合い続けるのかが今ひとつ腑に落ちないのは惜しい。

バイトリーダーで誰にでも優しくあり続ける女を演じた前園あかりは、ハキハキとして面倒見の良さ、ってのが雰囲気に良く合います。が、後半に至り、パチンコもセックスも金もという依存の百貨店に変貌するところがまた凄い。このシーンでにじみ出る色気、こう迫られたら逃げられない感じ。もっとも、その「男」を取るよりも、パチンコをとるってのがまたちょっといい感じなのだけれど。自分が貧乏で下品なんだ、と告白するシーンに妙にぐっとくるあたしもどうなんだ。

根本宗子は、車いすで毎日クレーマーよろしく店にやってくる女を演じます。野田裕貴演じるその原因を作った男を前に「弁当をくれるなら、生き続けようと思った」と告白するのだけれど、このルール自体が自分勝手なもので、「次にすれ違ったのが女性だったらラッキー」ぐらいのカジュアルさでこんな暴走に至ってしまうのがまた、(観る分には)面白くて。

墨井鯨子演じる、人との距離感が妙な女、終幕に至り、人からの見え方ではなく自分が正しいと思う人を守り、自分が正しいと云うことをしていこうという自立、という少々気恥ずかしくなっちゃうセリフだけれど、それをしっかりと。

少人数の短編を続けてきたからか、誰もが一癖二癖な濃ゆい世界の描き方は少々胸焼けしそうなほど。正直に云えば、その濃い人々を一ダースも用意すると、さすがにちょっと多い感じは否めないのです。手練れならば半分の人数でやりそうなところ、それをぎゅっと濃縮して描ききってしまうという「力づくの若さ」みたいなものが、ノっている、ということなんだろうなとも思うのです。

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