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2013.03.03

【芝居】「円」箱庭円舞曲(focus#3)

2013.3.1 19:30 [CoRich]

箱庭円舞曲の企画公演。過去作に関連した小品10編をゆるやかに繋いで構成する115分。11日までこまばアゴラ劇場。客席が三つに分かれていますが、舞台上手側にあるベランダでの芝居があるので、中央か下手側のブロックがおすすめ。客入れ時間中のDJ mixが爆音で楽しいので、お好きな方は早めに。

みんなで踊り、多数決をしてみると、周りの様子をうかがいながらばらばらと「12人の凡庸な日本人」(Intro)
リストラを進める会社、首を切る社員に宣告する役割を担う人事室のメンバーたち。上への不満も抱えつつ、Track#1「みんな私のことが好きだった」(第七楽章「みんな私のことが好き」)
国会議事堂前、一時はあんなに盛り上がったけれど今はショボくなってきたデモを眺める男女、知った風にあれこれ云う男だが、もう女は帰りたいTrack#2「Arabian Spring Nights」(第十四楽章「とりあえず寝る女」)
予備校の講師控室、浪人を重ねて来た男がやっと合格した大学の名前があんまりといえばあんまりで迷っている。もっとも、大学全入時代の今に至ってそこにしか合格できないぐらいでチンカス君とまで云われてたりして、でもマドンナ先生は前向きに。Track#3「マドンナー先生」(第九楽章「大人なのにバカ」、第十五楽章「気付かない奴は最強」)
地域のイベントに出演しようと人を集めた男は武道館にまで上り詰める気満々だけれど、あからさまにみんなバラバラで、しかも周りの方がずっとちゃんと考えていて。Track#4「That's Entertainment!」(第十二楽章「メガネに騙された
女がぽつりぽつり。初恋の人はじつは遠い親戚で。Interlude「ほんとうの話」
アート支援のNPOをやめた元代表にどうしても云いたいことがあるアーティスト、周りは少々無責任に煽って。Track#5「珍しい恋人-miki mituoka rainbow mix」(第十六楽章「珍しい凡人」)
映画スタジオ控え室で向き合う原作者と監督。Track#6「今日も誰かのせいにする」(第十七楽章「いつも誰かのせいにする」)
映画スタジオでのリハーサル、若い俳優はやる気がまるっきりなくてグズグズで。Track#7「ほね☆すて(実写版)」(第十九楽章「否定されたくてする質問」)
背中を向けて寝ている男に、女が語りかける。男の気のない返事。Track#8「ほね☆すて(漫画版)」(第十三楽章「極めて美しいお世辞」)
アパートの一室、浮気をしていた夫を責める妻、謎めいた女が突然乱入してくるが。Track#9「世界の男と女の魔法」
出産は成功したものの、母親は亡くなった。夫は医者をせめている。Track#10「○○○」
火葬場ですれ違う人々、それぞれに見送る人がいて、関係ないようですこしつながっていたりしてExtra Track「人の終わり」

多くの断片は、今までの作品に関連していたりするようです。美容師だったり、バカだったり、気づかなかったりというキャラクタが短編な分だけもっと濃く出てくるのです。アタシは実際のところ、記憶力がざるなので、ほんとに部分的にしかマッチングしないのが残念無念。

ネタバレかも。

「みんな~」は リストラ、という会社員にはヒトゴトじゃないリアルさがあって怖いベース。 情報部門の奴らはキモくて嫌だといってみたり、一人はさっさといちヌケしたりとと、ありそうな感じがてんこもり。終盤に至り、ここから一人さらにはイントラネットにアクセスするPCがないこと自体、そもそもこの部署自体がリストラ部屋だよな、ということが見えてきて戦慄するのです。さらりと怖いことを言い切る松本寛子がちょっとすごい。

「Arabian~」はカッコつけな男とうんざりしてる女。自分の足で一歩でも歩んでいないならば、それは意味はないと論破する女を演じた村上直子がかっこいい。

「マドンナ~」は いい人なんだけど、どうにもバカ、ということを周囲が気を遣っていえない感じ。そこにがっつり切り込んで、がんがん正論を言いまくってしまうというマドンナー先生、演じる原田優理子がまたクールビューティなのにこのキャラクタの爆笑編。バカにはバカと、頑張りが不足してるとか。わざわざ語尾をのばして「コマンドー」風に最強キャラにしてるのが可笑しい。いきなり草餅食べたりするある種のダサさも、スタローン風に味付けされていて可笑しいのです。ここに限らずかわいいキャラを一手に担う北川未来の現役生が実にいいのです。

「That's~」は 明らかに材料がそろってないのに、気持ちだけが空回りしている男と、現実がちゃんと見えているのに、巻き込まれているというかつきあっている人々。地方だからというのもあるし、目標があることが果たして正しいのかというあたりがぐるぐる回るような語り口。面と向かって語るには青臭くて照れくさいけれど、若ければこれを肴にして延々呑めそうな感じ。それはまた、作家の思索とともに歩むようでもあるのです。田舎で虚勢張ってる感じのボーカルを演じた玉置玲央がちょっといい。コーラスを演じた小林タクシーの謎過ぎる造形も楽しい。もとにあった芋煮会を持ってくるのもちょっと素敵。

「ほんとうの話」 一人の女の初恋から、ずっとずっと好きだった人のことの想いをまっすぐに語る、ちょっと素敵な一品。役者がリレーで一人を演じるのがちょっとおもしろい。男性の俳優もまた女性を演じてるのかどうか、一瞬見えなくなったのは相手の男かと一瞬思ったけれど、どっちなんだろう。

「珍しい~」 男が好き、という話は実際のところ芝居の物語としてそう珍しいわけではないけれど、まわり煽られて告白する男。空回りであっさりフられて、コミカルで少し哀しくも。申し訳ないけれど、須貝英の見た目の雰囲気にマッチしていていいのです。プロレス技を掛け合う二人というのは、男のボディタッチなコミュニケーションとして巧い感じ。

「今日も~」「~(実写版)」は一本の物語をカットで割ったように組になっています。どうにも本気が見えない役者、やるきのない若者のことかなぁとぼんやり見ていると、監督のたくらみが見えてきて、でもその監督じたいが明らかにダメというところに着地するのが大人のずるさというかズレが楽しい。もとの作品に続いて監督を演じた小林タクシーはずるくて、しかし実はダメという身につまされるような中年っぽさを存分に。

「~(漫画版)」はがらりと雰囲気が変わってしっとり、子供のいない夫と妻の長い長い時間を早回し点描の味わい。人と暮らしたことのないアタシにはファンタジーだけれど、きっとそういうことなんだよなぁ。

「世界の~」浮気相手と妻と夫の修羅場ではあるのだけれど、申し訳なさそうにしながらも開き直り気味の夫、浮気相手の若い女は意に介さない感じ。結果、妻が一人空回りなコミカルに。それが浮気なのかも微妙な感じで、妻もまた若い男との電話があったり。そこに分け入ってきた謎の女は「マジョをカリに来ました」と。かき回すだけかき回して、不条理劇の様相を呈しているような気すらしてしまうのです。

「○○○」は 妻を亡くした夫の怒り。それは不幸な事故なのだけれど、そこから断片的に、妻の父と亡くなった妻との対面、出産の日の職場のようす、子供の名前を付ける夫婦、結婚の申し込みと云った具合にさかのぼって、積みあげた時間を上からゆっくり確かめるように時間をさかのぼって描きます。 玉置玲央の静かな怒りの序盤が実にいいのです。

「人の終わり」 ばらばらに見えていた物語は、ここまででも細かくつながっていきます。その人物たちが、たまたま集う火葬場。誰だって死んだら焼かれるわけで、人の終わりは誰しも同じだということは終幕にふさわしい物語。

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