【芝居】「世界を終えるための、会議」タカハ劇団
2013.1.26 14:00 [CoRich]
11月の一人芝居と対をなす本公演、85分。27日まで駅前劇場。
人々がみな端末を持ち、結婚相手から飲み会の場所に至るまですべて端末を通したコンピュータからの指示に従って選択をするようになった時代。12個のモジュールが合理的な選択を行う世代のコンピュータが、次世代に置き換えられて3年が経った。時代遅れとなった旧世代のモジュール達への人間からの問い合わせはもうほとんどなくなり、持て余した時間をゲームやとりとめないおしゃべり、あるいは自己研鑽のための思考実験でつぶしている。
ある日、人々の端末に「一斉アップデート」の通知が届く。モジュールの一つが受け取ったのは、「現世代の動作を止める」という人間からの指令だった。それに変わる新世代のコンピュータが開発されているという話はなく、旧世代となっている自分たちが再び表舞台に立てるようになるのだと盛り上がり、その方法の検討を始める。
コンピュータの機能モジュールを役者それぞれにわりあて、「12人の会議」をするような体裁。サンドルの「正義」よろしく、疾走する列車のレールの先に居る5人の作業員の死か、1人を犠牲にして5人を救うかの命題を中心にすえ、合理的な解を求めるコンピュータと、もうすこし「人に寄り添った」解のありかたをぐるぐるとまわるうち、(人間とはというよりは)人間の判断とは、ということのアテのない思索。作家は「判断をするコンピュータを作る人」という思いに物語を着地させます。
ひたすら合理的な旧世代、美しい判断という特徴をもつ現世代の対決は、人間に近いという自負ゆえの矛盾を突いた旧世代がいったんは勝つものの、人間たちの問い合わせがくることもなく。あれだけ頼っていた人々はどうしたのかとか、これがテロだというのなら、それはどうなったのかなど、語るべきこと、あるいは哲学的な命題の取り扱いは山ほどあると思うのだけれど、それについては多くは語られず、むしろここからが物語なのだ、という気持ちはぬぐえません。そういう意味では、物語というよりは作家・高羽彩の頭の中の思索と混乱を覗くような不思議な気持ちになるのです。
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