【芝居】「リバーサル」日本劇団協議会
2013.1.19 19:00 [CoRich]
北京蝶々の大塩哲史の作を新進芸術家育成事業とした公演。小林七緒の演出、コンゲーム満載でエンタテインメントとして楽しい80分。29日までSpace早稲田。
恨みを持つ4人は家電メーカの社長の娘を誘拐して身代金を誘拐する。身代金を出す、という社長からの返事は来たが、娘はそんな筈は無い、という。この誘拐、このままでは失敗するといい、成功に協力するという。リスクの多い現金の受け渡しや振り込みよりは確実に手に入るものを提案する。果たしてそれは成功するのか。
家電メーカーに勤める身としてはギョーカイの厳しさ、あるいは本当の資産は何なのか、というあたりの目の付け所(ごくシンプルな切り口だけど)、気づいていたとしても芝居に織り込める作家はそう多くはありません。そういう意味でなるほど、大塩哲史の語り口だな、と思うのです。小劇場の芝居でありそうで意外に少ない、今の私たちの立ち位置を見回しつつ、見たくないこと、見えてしまうことを交えつつ、エンタメとして見やすい感じでしっかりと語る物語。場所の謎解き、現金受渡のリスクなどステロタイプだけれど、ちゃんと書き込んでいるのはいい感じ。
やむにやまれず犯罪を起こす人々、誘拐されたのに徐々にリーダーシップを取っていく娘、それが経営工学なのかはわからないけれど、グループを一つの目的遂行のため、時には人をコマにしつつも動かしていく、ということ。これを冷たいと感じる向きもありましょうが、まあ云っていることは正しくて(頭でわかっていても、それが実際にできればアタシも違う生き方もできましょうが:-)、実際のところどこかの研修にありそうにどんどん積み上がっていく感じ。景気が悪くなったって、この手の人心掌握は確かに正しく、武器となるのです。まあ少々反則なやりかたも混じりますが、まあそのあとの豹変がコミカルで人間くさい感じがまた楽しい。
まあ、これもファンタジーだとは思うのです。それでも、チラシによれば「ディストピアの近未来」を描く作家だけれど、やるせない現実の私たちの身近な感じに寄り添い、人々をしっかりと描くことの力を再確認するのです。幅広い年齢の役者を集められることもあいまって、ぐんと奥行きが出る感じ。
敏腕秘書を時にコミカルに、時に色っぽく演じる田島真弓の表情にやられ、誘拐されたのに「リバーサル」する娘を演じた今村美乃も可愛らしく格好良く持って行かれ、しかし怖くもあって。糖尿という設定の刑事を演じた岡本篤、コミカルだけれども終盤の格好良さちょっとしびれる感じ。堀越涼は可愛らしく優しく、しかし真剣さがきっちり。この役者、こういう気弱な優男なのにそれがちょっと格好良く見えちゃうのは痛し痒しではあるけれど。社長を演じた中原和宏のタヌキオヤジぶり、いいなぁ。
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