【芝居】「めくるめくセックス 発酵版」シンクロ少女
2013.1.19 14:30 [CoRich]
2009年初演作の再演。男子なら下手よりは中央か上手側を。この芝居について一晩中語り明かせる女友達が欲しくなる大幅増量135分。21日まで王子小劇場。
原因不明のまま眠り続けている妻と見守っている夫。よく出入りするようになっている弟の彼女との関係はずるずると続いている。弟と彼女の関係は冷めかけている。夫と妻の友人夫婦も訪れるが、もうずいぶんセックスレスが長い。弟のバイト先の友人の一人は未だ童貞で、その部屋に入り浸っている男は少々横暴で。
ある日、妻は目覚めるが、彼女が見たものは。
初演と同じように舞台を三分割。童貞男の部屋、眠り続けているベッド、リビングルーム。
2年以上眠り続けている妻、寂しさ故に浮気している夫、気持ちが本気になりかけている浮気相手の若い女、大好きでたまらないけれどどうにもセックスが弱いその恋人、もうずいぶんセックスレスな夫婦は風俗だったり、あるいは夢想でやはり求めるものはあって。あるいはセックスや愛に対して過剰な期待を持ってしまう童貞男、先輩風どころかジャイアン風にかきまわす男。
シンクロ少女らしい、というと言い過ぎかも知れないけれど、ある種のセックス至上主義というファンタジーだという気はするのです。実体が伴わない哀しさは脇に置くとして、なんかその作家の感覚は私の肌感覚にとても合う感じがします。その対局にあるようにみえて、恋とかセックスと云うことに対して過剰な期待を抱く童貞男も、実はセックス至上なファンタジーの裏返しの表現として巧く効いています。その感覚がまた、どこか他人とは思えない感じだったりもするのです。
若い恋人を演じた墨井鯨子、アタシ的には彼女史上、もっとも可愛らしく印象的なのだけれど、その後物語の中ではとんでもないビッチな落差も楽しく、片や実は片思い、片や無関心になりつつあるという振り幅。セックスレスな妻を演じた坊園初菜は、序盤で童貞男をもてあそんでみたり(喜んで、しかしあっさり帰るのがカッコイイ)、一人懺悔のように夢のこと、その後に自分でした、ということを語るシーンの雰囲気の厚みもすてき。その夫を演じた奥村拓の飄々とした軽さのバランス(妻のオナニーについて語るシーンなんてコメディだけれど)も実にいい。若い恋人を演じた中田麦平のまっすぐな感じは眩しさすら感じてしまうのです。
何より圧巻なのは、理不尽なバイトの先輩を演じた用松亮なのです。他の役がほぼフラットなのに比べて、ほぼジャイアンな理不尽さなのだけれど、実際のところ物語をかきまわすというよりは、弱い童貞男にしてもあるいは眠りから覚めて悩み相談めいた妻にしても、その望みを受け入れる懐の深さがベースに合って、実に愛すべきキャラクタとして造型されています。もっとも、こういう友人が居たら真っ先に切りますけれど、アタシは(笑)。それぐらいウザい男をしっかりと。
ネタバレかも。
長い長い眠りから覚めた妻が目にした夫の浮気の真実、その仕返しのように妻もまたどうでもいい男を寝室に招き入れる、という助走は、そのあとのプロレスな取っ組み合いにいい感じで突入していきます。演じた泉政宏も名嘉友美も圧巻(怪我は心配しつつ)。妻がパジャマを脱ぐでもなく、前のボタンを外すだけでブラが見え隠れという絶妙なエロさもまた、「発酵」している感じ。
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